インターネットアプリケーション時代の企業ネットワーク再設計
いまさら聞けない!?ネットワーク機器再入門

L2-HUB

 L2-HUBは,OSIのデータリンク層に対応した機能を備えたネットワーク機器である。一般にL2-HUBは,「スイッチングハブ」または「スイッチ」などの名称で呼ばれている。

 L2-HUBでは,CSMA/CDの通信基盤となっているMACアドレス(各ネットワークアダプタに付番された一意のID)を使用して通信が制御される。まずL2-HUBは,ポートから受け取ったデータを解析し,ポートの先に接続されているすべてのMACアドレスを記憶する。そして,データを受信すると,送信先として指定されたMACアドレスが存在するポートのみに,受信したデータを伝送する。このような挙動のため,1つの通信はL2-HUBの内部バスを占有せず,L1-HUBに比べてネットワークの負荷も少ない。そのためL2-HUBは,ネットワーク全体の効率を大きく向上させる。

 また,L2-HUBにはブリッジ機能(受信したデータをメモリにいったん蓄えてから伝 送する機能)が搭載されており,L2-HUBがコリジョンを受信した場合、L2-HUB自身が 再送処理を行う。したがってL2-HUBは,L1-HUBに見られたカスケード接続の段数制限 を受けない。L2-HUBを使用することによって,ネットワークトポロジーを自由に構成 できるようになるのである。

Fig.2-10 L2-HUBの通信動作
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 以上のように,L1-HUBと比べると,L2-HUBはさまざまな点で有利である。そのため,本稿の執筆時点では最もよく使用するネットワーク機器であるといってよい。しかし,残念ながらL2-HUBにも弱点はある。L2-HUBの通信制御はMACアドレスに基づいているため,ブロードキャスト通信(宛名なし一斉送信)を受信した場合には,全ポートに伝送してしまうのである。つまりL2-HUBは,ブロードキャスト通信に対してだけは,L1-HUBと同等のネットワーク機器と化してしまう。ブロードキャスト通信で問題となるのは,Windowsのブラウジングであろう。Windowsは,OSを稼動させておくだけでもブロードキャスト通信を発生させる。Windowsを100台以上稼動させた場合には,ブロードキャスト通信だけで,ネットワークトラフィックの数十パーセントを満たすという報告もあるほどである。そのため,L2-HUBで構成されたネットワークであれば,ノード数を100台未満に押さえるというのが一般的な指針となる。ノード数が100台を超えるネットワークであれば,後述するL3-HUBを使用して,ネットワークを複数のIPセグメントに分割する必要が生じる。

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