インターネットアプリケーション時代の企業ネットワーク再設計
いまさら聞けない!?ネットワーク機器再入門

ワイヤスピード

 L2-HUBとL3-HUBの性能を決定する最も大きな要素は,機器の内部バスの速度であ る。L2-HUBとL3-HUBでは,同時に複数の通信が内部バスを通過する。ここで,4個のポートを搭載しているネットワーク機器を考えてもらいたい。この機器の内部バスで同時に発生する通信は,2つである(たとえば,ポート1→ポート4とポート2→ポート3)。一般的にL2-HUBとL3-HUBはFull Duplexをサポートするので,さらに2つの通信も発生する可能性がある(ポート4→ポート1とポート3→ポート2)。もし,この例ですべてのポートが100BASE-TXであったとすると,内部バスが400Mbps未満の通信速度であれば,ネットワーク機器のなかで遅延が発生することになる。L3-HUBでは,「(100BASE-TX×26ポート)+(1000BASE-SX×6ポート)」といった構成をよく見かける。このような構成を採用しているときのL3-HUBで遅延を発生させないためには,8.6Gbps以上の通信速度を備えた内部バスが必要となる。

Fig.2-12 内部バスに流れる通信
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 L2-HUBとL3-HUBでは,通信先のポートを判断するときなどにオーバヘッドも発生するため,実際には前述の例を超える通信速度を備えていないと,内部バスのなかで遅延が発生してしまう。そのため,ネットワーク機器を選出するときには,オーバヘッドなども考慮に入れて,遅延が発生しないように十分な速度があるものを探す必要がある。

 一般に,内部バスでの遅延が発生していない状態を「ワイヤスピード」と呼ぶ。読者諸氏も,ネットワーク機器の選定に際して,仕様が同じように見える2つのネットワーク機器の価格差がずいぶんと開いていて,首を傾げたことがあるのではなかろうか。一般的に,安価(1万前後)に販売されているL2-HUBなどは,高トラフィックでのワイヤスピードが保証されていない。価格的に押さえられているネットワーク機器は,内部バスの速度が十分ではないと考えてよいだろう。

 ワイヤスピードが保証されているネットワーク機器は比較的高価であるため,エンドノードを接続するためのL2-HUBなどであれば,ワイヤスピードが保証されたものを選択する必要はない(もちろん,予算に余裕があるのならば,ワイヤスピードが保証されているほうが望ましい)。しかし,高トラフィックとなりやすく,遅延発生の影響が大きいバックボーンに用いるネットワーク機器を選出するときには,必ずワイヤスピードが保証されたものを選択する必要がある。できるだけ,事前にメーカーやベンダーに確認していただきたい。

ブランド名にご注意

 ネットワーク機器を選出するときに,「著名なメーカーであるから大丈夫であろう」と考えるのは危険である。L3-HUBなどで高速ケーブルを多く接続する場合,ワイヤスピードを保証することは技術的にかなり難しいらしい(恥ずかしいかな,筆者はハードウェアについては門外漢であり,「らしい」としかわからなかった)。そのため,世界的に名の通ったメーカーの製造したL3-HUBでも,ワイヤスピードが保証されない場合がある。

 ワイヤスピードが保証されている機器が本当にその性能を発揮するのは,高トラフィックな状態になったときであり,平常時はワイヤスピードが保証されていなくても問題なく動作する。バックボーンがダウンしてから「しまった!」と思っても,もう遅い。ネットワーク機器を選出するときには,メーカーやベンダーにしっかりと問い合わせていただきたい。

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