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ベトナムのオフショア開発事情知っていますか?世界のオフショア事情(2)(3/3 ページ)

前回はインドのオフショア事情を紹介したが、今回はベトナムにおけるオフショア開発事情やベトナムの気質など幅広く紹介する。

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ベトナムIT産業の全体像を理解しよう

 ベトナム全土におけるエンジニア数は現在推定3万5000人、IT関連企業数は約750社、ソフトウェア/サービス産業売上高は5億ドル(うちアウトソース業務の受託、輸出は1.05億ドル)となっています。いずれも、近年は非常に高い伸び率を見せています。売上高は毎年年率40%を超える伸び率を保っています。

 IT学部のある大学数は99を数え、総合大学以外の専門学校などを含め、その数は急激に増えています。政府も理数系の教育に非常に力を入れています。国際数学オリンピックやロボットコンテストなどでは常に上位に位置しており、大学生の地頭の良さが分かります。また、あるアンケートの結果では、将来就きたい職業ランキングではエンジニアが常に上位です。

 このように伸び率は非常に高いのですが、母数がまだ非常に小さく、産業としての規模はまだ小さいといえます。エンジニア数は日本・中国・インドともに50万人以上、企業数は中国は1万社以上、売り上げ規模に関していえば日本は14兆円市場、つまり100円/ドルとして約1400億ドル(中国はその半分ほど)といわれています。これらと比較してベトナムの数字がいかに小さいかが分かります。

 従業員数が最大の企業はFPT Softで、2007年11月時点の従業員数は約2500人です。これに続くTMA Solutions、FCGVなど、規模の大きな企業は数えるほどです。多くの会社は数十名規模であり、良くいえばIT業界の関係者同士の顔が見えるアットホームな雰囲気ですが、まだ産業としては成長段階という感じです。

 技術面では、アプリケーション指向、オープンシステム重視で発展が進められています。.NETやJavaのスキルを身に付けたエンジニアが非常に多く、COBOL、Rubyなどそのほかの言語は比較的少ないといえます。DBは、教育現場ではMS SQL Server(+MS Access)を学習することが多く、プログラム言語と合わせてMicrosoft系技術を保有している割合が高いです。

 なお、現在ベトナム全体としては組み込み開発に目を向けており、ビジネス拡大に力を入れていますが、まだその規模は大きくありません。

ベトナムの政策目標

 ベトナムでは5年ごとにIT産業の計画を策定・実施しています。2010年までの目標は次の通りです。

  • 売上高の年平均成長率30〜40%
  • 売上高8億ドル(うちアウトソース業務の受託、輸出は3.6億ドル)
  • 5万5000〜6万人のソフト産業従事者
  • 1人当たりの売上高1万5000ドル/年
  • 1000人以上の従業員を持つソフトウェア企業を10社以上
  • 100人以上の従業員を持つソフトウェア企業を200社以上

 2000年までの計画、2005年までの計画にも人材育成がついて回ってきましたが、規模の小ささを克服するためにも、引き続きこの課題に取り組む必要があります。

 ただし、人材育成施策の具体的な実行が遅れ気味であり、この計画の達成度は国のIT産業発展に大きくかかわってくると思われます。

都市部のエンジニア単価は15〜25万円/人月

 オフショア開発において、コストメリット「のみ」の追求は、あまりうまくいくとは思えません。

 物価の上昇と共に、常に安い国を探し求めるという無限ループに陥る可能性があるからです。ですが、コストメリットの享受はオフショア開発の動機の1つになることは間違いありません。そこでベトナムのエンジニア単価や給料、そのほかの物価も併せて紹介します。

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ハノイ市といえば落ち着いた湖だろう。奥には高層ビルが建築中だ

 現在ハノイ市、ホーチミン市の2大都市ではエンジニア単価(つまり発注側から見た人月単価)はおおむね15〜25万円/人月となっています。各社・各プロジェクトで大きく違いますし、FPによる見積もり方法を採用している所もあるのであくまで目安と考えてください。

 エンジニアの給料はどうかというと、大卒の新入社員エンジニアで200〜300ドル/月程度です。ほかのオフショア開発国と同様に、大学に進学できる人は少数であり、その中でもエンジニア職は人気の高い職業だけにエリート集団ですので、ほかの職業と比べて平均給料は高めです。

 なお、参考までにビールは大ジョッキ1杯で20円程度、公共バスも20円程度です。そこら中にある安い食堂では、1食数十円〜200円程度で十分な量を食べることができます。

日本語の対応力はどれくらい?

 恐らく多くの方にとって一番気になるのは、日本語力を含むコミュニケーションであると思います。

 現在育成が急がれているものの、日本語を話せる技術者の数はまだまだ不足しています。そのため、日本向けの仕事を請け負うベトナム企業では、日本語のプロフェッショナル(コミュニケータと呼ばれる)がプロジェクトごとに配置され、ドキュメントの翻訳からTV会議の通訳などを行うことが多くあります。

 彼らの大半は大学で日本語を専門に勉強してきた人たちで、IT関連用語はコミュニケータとして働いていく過程で身に付けていきます。

 このコミュニケータの存在が中国と一番違う部分です。次回はコミュニケータを介したコミュニケーションに代表される、ベトナム企業とのコミュニケーションにフォーカスしたいと思います。

筆者プロフィール

霜田 寛之(しもだ ひろゆき)

オフショア大學 講師

Global Net One株式会社代表

日立ソフトにおいて、ベトナム最大手ソフト開発企業とのブリッジSEとしてオフショア開発プロジェクトに参画。現地ベトナム人の人間性の裏表の体験や優秀なエンジニアたちとの出会いを通してベトナムの可能性と魅力に取りつかれ、Global Net One株式会社を設立。

ベトナム活用のメリット、注意点をより多くの日本企業とシェアしてオフショア開発を成功に導くために、ベトナムに特化したオフショア開発コンサルティングやオフショアベンダ情報の提供と選定支援、ベトナム進出サポートなどを行う。

オフショア大學ではプロジェクトへの影響要因としてのベトナムの地域特性、文化特性について教鞭(きょうべん)を執る。


 Global Net One株式会社http://www.globalnet-1.com/j/



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