中国とまったく対照的なベトナムオフショア事情世界のオフショア事情(3)(1/4 ページ)

今回は、日本の小規模ソフトウェアベンダにおけるベトナムオフショア初体験の模様をインタビュー形式で紹介する。

» 2008年08月04日 12時00分 公開
[幸地司,アイコーチ株式会社]

 今回は、東京に拠点を構える独立系小規模ソフトウェアベンダのベトナム初挑戦への取り組みをインタビュー形式で紹介します。

 今回の舞台となる有限会社ティーホッパーズは、日本のシステムインテグレータ業界に一石を投じるために廣中靖久氏が3年前に設立した会社です。同氏は、起業当初から中国・大連のパートナー企業を活用したオフショア開発を推進しています。

中国撤退を目の当たりにして独立を決断

 それでは、ここから廣中氏のインタビューを紹介します。

聞き手:幸地司

話し手:廣中靖久氏有限会社ティーホッパーズ 代表取締役)

――なぜ安定したサラリーマンを辞めて、オフショア開発を専門とする設計・仲介の技術集団を作ったのですか?

廣中氏 初めに私のプロフィールを紹介します。私は大学時代に電子工学を学びました。ハードウェア系にも興味はあったのですが、就職難の時代ということもあり、内定を頂いたシステム開発会社に就職しました。その後、何度か転職を繰り返し、最後に中国・大連でオフショア開発を展開する企業に就職しました。

 その会社は、中国・大連の工数を国内で販売することが目的でした。「日本に営業拠点を持たない大連のシステム開発会社にお客さまを紹介する」という、営業主体の会社でした。紹介した会社でプロジェクトを成功させるため、問題なくプロジェクトを運営・管理することを求められました。進ちょく管理、QA(品質保証)、そして、成果物の品質管理などが主な役割でした。

 ただし、中国オフショア新規参入組であるその会社にとって、安い中国での工数を国内で販売するだけでは営業的に厳しかったと思います。大手システムインテグレータは自ら資本投下して開発拠点を作るか、中国で直接パートナー企業を見つけています。程なくして、その会社は中国オフショア開発から撤退してしまいました。

――勢いよく中国に進出したものの、次第に担当者が疲弊して、あえなく中国から撤退する会社は後を絶ちません。ご愁傷さまでした

廣中氏 そのとき、海外の工数をただ販売するのではなく、国内で不足気味の上流工程のSEであれば、まだまだ需要があるのではないかと思いました。

 現に、オフショア開発で求められる外部設計書は、従来の記述レベルでは問題の原因になりがちです。そこで、外部設計フェイズから参加させていただき、開発、テスト工程の運営・管理と国内での受け入れテストを実施する目的で、会社を設立しました。

――以前から大連の土地勘をお持ちなのに、なぜわざわざベトナム開発に挑戦しようと思ったのでしょうか?

廣中氏 メルマガや@ITの記事などでベトナムが熱いことは認識していました。また、後発組である弊社にとっては、よくある中国でのオフショア開発というだけではインパクトに欠けると感じていました。そんなある日、東京ビッグサイトで行われていた展示会で、一コーポレーションジャパンさま(以下、ICHI)と知り合いました。そのときの会話は次のようなものです。
ALT ベトナムオフショアベンダの高密度な開発現場の様子

「単価は幾らですか?」

「○○万円です」

 ICHIはインパクトを出したかったのでしょう、

 いくらベトナムでもあり得ない価格を提示してこられました(笑)。後で具体的にお話を進める段階で各種作業内容、責任範囲と共に単価も合意しましたが、このやりとりでかなりICHIに好感を持ちました。

 このときから、何とかベトナムでの開発実績を作りたいと真剣に考えました。まずは、お世話になっているシステムインテグレータへの提案から開始しました。

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