前回はオフショア開発における日本人人材に焦点を当てたので、今回は受注側であるベトナム人人材に焦点を当て、それぞれの違いを浮き彫りにする。
前回はオフショア開発における日本の人材に焦点を当てました。これからは相手国に対して成長目標を課すだけではなく、日本人自身の成長も考えるべきだと主張しました。
今回は、オフショア開発を受ける国側からの人材像を考えてみたいと思います。
「パートナー関係で」ですとか、「信頼関係を構築して」と口でいうのは簡単ですが、実際に日本側の利害関係者全員がそのことを心から理解し、行動に現れるようにするのは、簡単なことではありません。まずは、個人として、多様な人々と一対一の関係を築いていくところから始める必要があります。
初めに筆者の意見を要約すると、日本人の立場から次のことが肝要です。
そして、この問題を解決するために、オフショア開発の委託先で働くメンバーはどのような人で、どのようなものに刺激され、どのように会社との関係を希望するのかを考えたいと思います。
特に、「いま私たちが考える受託国側の人物像」と「彼らが考える人物像」のギャップを認識するところに焦点を当てます。
さて、それでは実際のベトナムやベトナム人技術者たちのケースを紹介していきたいと思います。
まず、筆者がこれまで聞いてきた中で、日本人から見たベトナムのイメージで多いものは、次の2つです。
「発展途上国で、まだ社会的インフラが整備されていない国」というネガティブな意見と、「勤勉でまじめ、大学に通えるのは一部の人たちだけだから、大卒中心のIT技術者は超エリートばかり」というポジティブな意見です。
もちろんどちらも間違っているわけではありません。しかし、前者に対しては、確かにまだ発展途上国とはいえ、富裕層や中間層の出現による都市部での購買力の高まりは非常に顕著です。後者の意見に関しては、確かに大学に通えるのは一部の人たちだけですが、大学のレベル自体もまだまだ成長余力があり、人材レベルにばらつきがあります。
ここで教育についてもう少し述べておきますと、ベトナム国内の組織が中心となって行う教育には、大学教育や専門学校における教育、企業に就職してからの新人教育・企業内教育など、さまざまな階層、種類、切り口で説明できます。
例えば大学教育では、
高度な研究が望まれる大学院では予算が多く確保できないために、さまざまな機材をそろえた研究が困難となっています。しかも、研究者としての就職先は限られてしまっているため、大学院に進む人は少数派です。
また、企業内教育では、新卒社員のために、報告・提案の仕方、ドキュメンテーション、品質管理など、業務に必要なものを教育します。短い企業だと数日、長い企業だと2?3カ月を教育に費やします。このような研修制度は、日本では割と当たり前ですが、ベトナムでも同様の形態をとっている企業が多いです。
一方の日本が主体となった教育には、ODAによる大学内における「日本向け人材養成クラス」の設置(以前の記事でも少し触れました)、委託先企業に対する通常業務内指導、大学との共同研究室の設置などが実施されています。
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