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これからの不況を勝ち抜くのはオフショア担当者?世界のオフショア事情(6)(2/2 ページ)

今回は、IT業界におけるオフショア開発にかかわる人材の位置付けについて、日本が担う発注側と、ベトナムや中国が担当する受注側に分けてそれぞれ検証する。

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人材採用にも好影響が表れている

 ベトナムにも進出し、2007年と2008年にベストベンチャー100に選ばれているソフト開発会社である株式会社ヘッドウォータース代表の篠田庸介氏は、次のようにいいます。

「オフショア開発に取り組む最大の目的を自社のエンジニアの育成とした。(中略)英語環境での開発、世界標準での開発を経験したエンジニアの価値は高まるはずだ。(中略)また、オフショア開発に取り組むことによって、自社の採用力が格段に上がった。ここ数年は日本国内のエンジニア不足が深刻であり、エンジニアの確保は各SIerの命題だった。そんな中で小規模の自社が年間50人ものスキルのあるエンジニアたちを採用できた一因には、このオフショア開発がある。エンジニアの育成。エンジニアの採用。この2点において、十分な費用対効果を実現できたと認識している」(Global Sourcing Review、2008年12月号、オフショア大學刊)

 篠田氏はエンジニアの育成のみならず、結果的に採用でもオフショア開発が好影響を与えたといいます。

 ベトナムなどへの海外出張や常駐、海外エンジニアとの開発や交渉を通し、エンジニアをモノづくりのプロフェッショナルのみならず、ビジネスパーソンとしてのプロフェッショナルに育つことを目標とすることで、多くの人が集まってくるのでしょう。

 逆にいえばそれだけ、オフショア開発を「成長のために役立つもの」と心のどこかで認識している人や、オフショア開発に挑戦したい人の潜在数がいるということです。

 ちなみにですが、新卒採用の話になってくると、大学での教育レベルの話は避けて通れません。

 大学では、理系学生は研究や実験に熱心ですが、SEとして顧客とコミュニケーションを取ったり、要件を抽出したり、もしくは、人材のマネジメントをしたりといった、いわゆるビジネス教育はほとんど実施されていません。

 このような状況では、上流工程を国内で実施できるような即戦力を養成するのは不可能です。これはある程度経験が必要なので、仕方ないといえますが……。そもそも、製造工程などでも即戦力にできるような教育とはなっていません。さらにいえば、理系はまだ良い方で、文系学部などは徹底的に遊ぶ意識で最初から入学してくる学生も大量にいます。

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 それでもまだ、文系出身者が得意とするであろう、顧客や海外とのコミュニケーションスキルやビジネススキル、広く視野を持つことなどは、日本のIT産業にとっても上手に取り込み、生かしていく必要があると考えます。オフショア開発に対する適応度も、より高い可能性があります。

 話を元に戻すと、オフショア開発に対する興味を持つ人の潜在数は多いとする仮定が正しいとします。すると、首を突っ込んでみたい人も多いということになります。ただし、その段階ではどのような苦労があるのか、まだあまり把握していません。

 そして、オフショア開発は成果を出すまでには何よりも継続、つまり根気が必要なものです。何となくで始めてしまった人には想像以上の苦労で、オフショア開発推進への反対派になってしまうかもしれません。

 企業側としては、前述の篠田氏のように、オフショア開発に対する長期的計画と信念を持って、オフショア開発へ興味を持ったエンジニアにどれだけ説明できるかが、企業とヒトを強くできるかどうかの分岐点になってくるのではないでしょうか。

ベトナム人材の実力は?

 前述したシンポジウムでは“Global Sourcing”、つまり世界における最適地での仕事の振り分けが大事であるという点も議論されました。

 受注先が中国だけではリスクが一極集中してしまい、何かあったときに危険でもあります。ベトナムは、その意味で存在感を急速に高めています。それではベトナムの人材とはどのようなものでしょうか?


 次回は、引き続きGlobal Sourcing時代の人材について、特にベトナムに焦点を絞って執筆したいと思います。

筆者プロフィール

霜田 寛之(しもだ ひろゆき)

オフショア大學 講師

Global Net One株式会社代表

日立ソフトにおいて、ベトナム最大手ソフト開発企業とのブリッジSEとしてオフショア開発プロジェクトに参画。現地ベトナム人の人間性の体験や優秀なエンジニアたちとの出会いを通してベトナムの可能性と魅力に取りつかれ、Global Net One株式会社を設立。

ベトナム活用のメリット、注意点をより多くの日本企業とシェアしてオフショア開発を成功に導くために、ベトナムに特化したオフショア開発コンサルティングやオフショアベンダ情報の提供と選定支援、ベトナム進出サポートなどを行う。

オフショア大學ではプロジェクトへの影響要因としてのベトナムの地域特性、文化特性について教鞭(きょうべん)を執る。


 ベトナムIT企業総合マッチングサイトhttp://outsource2-vietnam.net/

 Global Net One株式会社http://www.globalnet-1.com/j/

 オフショア大學http://www.offshoringleaders.com/


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