|
ファイル交換と ネットの音楽著作権問題
インターネットサービスの中でも期待が大きいのが音楽配信だ。しかし、そこに大きく立ちはだかるのが「著作権」問題。日米で起こった著作権をめぐる裁判を通して、ネットの音楽について考えてみたい。 |
|
|
ピア・ツー・ピア(P2P)
サーバーを経由せず、個々のパソコンどうしを接続して情報をやり取りするネットワークの形態
複製権
著作物を複製する権利
公衆送信権
公衆によって直接受信されることを目的とした送信を行う権利。著作物を送信可能(ファイルをダウンロードできるようにするなど)な状態にする送信可能化権も含まれる |
|
|
日本版Napsterとして有名な、ファイルローグをめぐる紛争が、今年の1月29日、ついに裁判の場に持ち込まれた。
ファイルローグは、Napsterと同様、インターネットを介したピア・ツー・ピア(P2P)方式のファイル交換システム。運営会社の日本MMOによれば、ユーザーは世界中どこの相手とも、ネットでファイルを共有して直接交換できる。そのうえ、音楽ファイルが専門のNapsterと違って、どんな種類のファイルでも交換可能だという。
この事件は、システムを介して音楽の不正コピーが交換され、著作権法の複製権や公衆送信権をユーザーと共同で侵害し、または侵害を惹起し助長したとして、日本レコード協会傘下のレーベル19社と日本音楽著作権協会(JASRAC)が、日本MMOを相手取って、差止仮処分を東京地裁に申し立てたというものだった。
Napster事件のあらまし
すでに米国などでは、類似した裁判紛争は何件も発生している。なかでも有名なのは元祖P2P、「Napster」の事件だ。
事件は、米レコード協会(RIAA)傘下のレーベル十数社が、1999年12月、Napsterを集団で提訴したというものだった。
レーベル側は、交換されているファイルの多くは海賊版(不正コピー)であって、ユーザーの著作権侵害行為を、Napsterが助長し寄与したなどと主張した。
裁判は紆余曲折を経た末、レーベルの提出する著作権侵害情報の提供と引き換えに、Napsterに対して著作権付き音楽ファイル交換の遮断を命じる仮処分命令が昨年3月に下された。さらに7月、完全に遮断できるまでサービス停止を続けるように、あらためて法廷で命じられている。
これに対しNapster側は、企業の存続を賭けて、海賊版音楽の完全遮断技術を開発しようと試みたが失敗し、やむなく有料サービスへの移行を準備してきた。しかし有料となってもレーベル側が、楽曲の提供に応じないため、不当に音楽ネット配信市場の独占を図ろうとしているとして、Napster側はさらに争う構えをみせており、紛争はいまも混迷の色を深めている。
予断を許さない ファイルローグ事件の行方
太平洋で遠く隔てられた日米で、一見すると偶然よく似た裁判が起こったことになる。だから日本のファイルローグ事件も、Napster事件と同様、順当にいけば権利者側が勝訴して当然だと言う人もいる。だが日本MMO側は、この裁判で全面的に争っている。
「交換されているファイルのうち、音楽ファイルはほんの一部にすぎない。実際にファイル交換を行っているのは、同社ではなく個々のユーザーだ。同社は利用規約で著作権付きファイルの送信可能化を禁止しており、ファイルの内容もわからないので、回避措置をとるのも困難だから、責任の前提となる「過失」が認められるか疑問だ。さらに具体的に問題のあるファイルを指摘してもらえば、対応する意思があると公表しているのに、同社に対してレーベル側は具体的な指摘すら行っていない」
以上は日本MMO側による反論の、ほんの一部にすぎない。
|