#016 - スピードネット Part3	High Speed Access

衝撃の記者発表から2年
ついにサービス開始へ

　あまりにも衝撃的な発表に、場内にいた人々が一瞬息をのんだ。99年8月、「スピードネット」の設立記者発表でのことだ。その発表とは「メガビットクラスの接続を月額5000円程度で」、しかも無線方式で提供するというのだ。

　各種ブロードバンド接続が本格的に普及し始めたいまとなっては、驚くほどのことではないが、一般ユーザーが利用できるラストワンマイル*1といえば遅くて高いNTTのアナログ/ISDN回線以外に選択肢はなかった当時、大きな驚きと期待を持って報道された。発表されたサービス開始時期は2000年夏。しかし、夏が過ぎ、秋も深まり、冬になっても、サービス開始の知らせを聞くことなく2000年は終わってしまった。そして、社長交代、東京電力による増資など紆余曲折を経て2001年5月25日、スピードネットはついに待望の無線方式によるブロードバンド接続サービスを開始した。あの衝撃的な記者発表から、実に2年近くが経過していた。

埼玉県さいたま市で開始
注目の料金は4350円

　スピードネットが始めたサービスは、最高で1.5Mbpsの接続を月額4350円で提供しようというもの。この中には、無線アンテナや無線子機の使用料金が含まれている。また、導入時に契約手数料として3000円、工事費用として9900円が必要だ。

　サービス開始時は、埼玉県さいたま市の一部地域での提供となる。これは、昨年の秋から行っていた実証実験のエリアがそのままスライドしたもの。そして、9月からはさいたま市の全域に、10月には東京都杉並区、練馬区、12月からは三鷹市、府中市といった東京都の市部、ならびに神奈川県横浜市および川崎市の一部地域にまで拡大する。来年の2月からは千葉県市川市、船橋市、浦安市へと拡大する予定だ。このように東京の中心部ではなく周辺地域からサービスを開始することに対し「ネット利用の中心的ユーザーである20〜30代の世帯密度の濃い住宅地域を選んだ」（スピードネット・和田裕社長）と説明。「高いビルが少ないので電波が届きやすい」とも。

初期費用の安さアピール
夏以降はFTTHも導入予定

　ただし、同社がサービスを予定しているエリアは、CATVインターネット*2、ADSL*3もサービスを行っているブロードバンド激戦地だ。「プロバイダ料金や機器使用料込みで4350円なら十分アピールできるし、導入時にケーブル引き込みの手間が不要な点など無線のよさをアピールしたい」と和田社長は同社の優位性を強調する。実際、たとえばCATVインターネットは工事費などを含めた初期費用に2万〜6万円程度、利用料金が月額5000〜6000円かかるので、後発のスピードネットにもチャンスはある。また、CATVを導入しにくい集合住宅の場合も、ベランダに無線アンテナを取り付けることで比較的簡単にサービスを提供できる同社が有利だろう。

　一方、フレッツ・ADSLの月額4600円（7月から値下げ予定）＋プロバイダ料金（980〜2200円程度）に対しても、その安さを十分にアピールできるだろう。ただし、初期費用の点においては、契約料800円＋工事費用2800円（ユーザー工事）のフレッツ・ADSLに軍配が上がる。

　なお、同社では、詳細は未定ながら、今年の夏より、最高10Mbps（複数ユーザーで帯域を共有）の光ファイバー*4によるサービス（FTTH）を予定している。

電柱側基地局　最大で100ユーザー程度まで収容できる基地局。収容ユーザーが増えた場合も簡単に増設できるので、常に一定のトラフィックを確保することが可能だという

ユーザー宅アンテナ　ベランダなどに取り付けるアンテナは、基地局の方向を向く。2.4GHzの電波は直進性が高く、途中に障害物があると電波が遮られてしまうため、エリア内でもサービスを受けられない場合もある

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