#016 - スピードネット Part3	High Speed Access

ワイヤレスならではの
工事の簡単さをアピール

　ブロードバンド事業者が発表するエリア展開計画を聞くたびに一喜一憂する。たとえば、杉並区でサービス開始とうたわれていても、その実態は、杉並区のごくごく一部のエリアであったりするからだ。しかし、スピードネットでは「提供エリアはほぼ行政区分に準じ、エリア内は電波が届くようにアンテナを設置する」（同社・馬場博幸常務）と頼もしい答えが返ってきた。ただし、同社は東京電力の光ファイバー網をバックボーン*5に利用してエリア展開する。そのため当面は東京電力がカバーする関東一円でしっかりとした体制を作ることを優先し、現時点では関東以外でのサービスの具体的な予定はない。

　また、導入工事に関しては、電波が届くかどうかの調査のために工事担当者が出向く。しかし工事自体は簡単で、戸外のアンテナから宅内へのケーブル引き込みについても「超薄型の同軸ケーブルを利用してベランダの窓からでも引き込むことができる」（和田社長）と簡便性に自信を見せる。FTTHやCATVなどのケーブル敷設工事が難しい、マンションなど集合住宅への対応も容易だという。

Bluetoothとの干渉の懸念
無線以外の技術も併用

　スピードネットが無線方式で利用する2.4GHz帯の周波数は、産業・医療機器などに割り当てられた周波数であり、電子レンジがこれを利用している。無線免許を持っていなくても使えるので、さまざまな分野で利用が広がっており、無線の新規格として注目を集める“Bluetooth*6”もこの周波数を利用している。ここで心配なのは電波干渉だ。Bluetoothはすでにノートパソコンや周辺機器の一部に搭載されているが、今後は携帯電話や携帯情報端末、家電製品などでも採用され、普及が進むとみられている。近くでBluetooth機器を利用した場合、接続スピードが低下する懸念はぬぐい去れない。同社によれば実験の結果、深刻な影響は見られなかったという。また、同社では「将来的には別の周波数やメタル回線*7、FTTHなどもサービスに取り入れたい」（和田社長）と、2.4GHzの無線にこだわるつもりはないようだ。

技術的課題をクリアすれば
有望なラストワンマイルへ

　同社は、99年末から2000年初頭にかけて、1回目の実証実験を東京で行っている。その後、2000年の秋にも現在のさいたま市で2回目の広域実証実験を行っている。このように実験を2回に分け、サービス開始を延期したことに関しては「慎重に取り組みたかった」（和田社長）と説明する。確かに地方のコミュニティ系通信網では実績のある2.4GHz帯の無線だが、これほど広域かつ大規模にサービスが展開される例は他にない。そのため技術的な部分はもとより、オペレーション業務の部分でも十分な検証を行ったうえでサービスを開始したいという思いがあったのだろう。

　無線を利用した接続サービスは、通信インフラ整備の遅れている地方の郡部や、物理的にケーブル敷設ができない地域において、有望なラストワンマイルとして期待されている。今回スピードネットが開始するサービスは、その試金石といっても過言ではない。99年8月の衝撃的な記者会見以来、同社の動向には多くの人が注目し期待してきた。正式サービスが開始されたいま、このような一般ユーザーの期待を裏切ることのないよう、信頼性の高い確かな接続サービスを行ってほしいものだ。

スピードネット　www.speednet.co.jp 提供エリアの検索や、入会申し込み、事前登録などがホームページ上で可能になっている 無線アクセス ●回線速度：最大1.5Mbps（ベストエフォート） ●月額料金：4350円（回線利用料、通信機器利用料、プロバイダ料金を含む） ●初期費用：標準工事費9900円、契約手数料3000円 ●サービスエリア：2001年5月25日　さいたま市の一部/9月 さいたま市全域/10月　東京都杉並区、練馬区/12月　東京都市部、神奈川県横浜市および川崎市の一部/2002年2月　千葉県市川市、船橋市、浦安市 有線アクセス（光ファイバー） ●回線速度：最大10Mbps（帯域共有型）●月額料金：1万円以下（編集部予想）●サービス開始時期：2001年夏

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