東芝液晶テレビREGZA<レグザ>最強伝説の秘密――「メタブレイン」ストーリー(3/3 ページ)

» 2007年11月19日 10時00分 公開
[本田雅一,PR/ITmedia]
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進化する「メタブレイン」――「パワー・メタブレイン」へ

 そしてセーヌ2を基礎に作られた「新メタブレイン・プロ」をさらに進化させたのが、階調増加処理と液晶パネルの倍速化処理を行う新LSIを「新メタブレイン・プロ」に統合した「パワー・メタブレイン」である。

photo 映像エンジン「パワー・メタブレイン」の研究・開発を行っている青梅工場の研究開発棟

 「パワー・メタブレイン」は「新メタブレイン・プロ」の特徴をすべて引き継ぎながら、放送波やDVDなどの8ビット階調による疑似輪郭を解消し、動きボケに対する根本的な解決方法「フルHD・モーションクリア」を提供している。そして、ここでも絵作りとLSI設計を一体化させた東芝ユニークの開発体制が良い結果を生み出している。特にフルHD・モーションクリアの動作は、倍速化技術全盛の時代にあって非常に高い成果を上げた。

photo 「フルHD・モーションクリア」。独自の高精度動きベクトル補間技術で、液晶テレビの残像を低減する

 倍速化を上手にこなす鍵は、コマ間にある中間像を生成するアルゴリズムの精度にある。中間像は動画内で動いている被写体を検出し、その動きに合わせて中間位置に被写体を移動させ、背景と馴染ませる。このとき、動き検出が不完全だと中間像で被写体が不自然な位置に表示され、人間の目には不自然なエラーとして知覚されてしまう。

 そこで、動きがうまく検出できないと判断した被写体(オブジェクト)に対しては、中間像をあえて生成しないよう、各社とも工夫をしている。だが、当然ながら中間像を生成しなかった被写体には、従来の液晶テレビと同様の動きボケが発生してしまうのである。

 言い換えれば、どこまで高精度な動き検出を行い、動き検出のエラー率を下げるかが、倍速化技術のポイントとなる。そこでフルHD・モーションクリアでは、動き検出しにくい、苦手なタイプの映像を探し、それに対してアルゴリズムを検討するという開発手法が行われた。

 つまり、すべての映像に対して一様な動き検出を行うのではなく、動きオブジェクトの持つ映像的な特徴を判別した上で、適応的に動き検出のアルゴリズムをフレキシブルに切り替えているのだ。

photo 「オブジェクト適応フレキシブル予測技術」。同じオブジェクトが繰り返す時は、繰り返しが途切れるまでエリアを広げて真の動きを判別する

 たとえば、最も動き検出エラーが出やすいのは、細かく同じような映像パターンが繰り返されている映像だ。通常はサイズの小さな被写体の動きを正確に検出するため、動き検出を行うブロック(動き像検出パターンのサイズ)を小さくした方がいい。ところが、動き検出ブロックを小さく固定してしまうと、このような画像の場合、今度は似たような映像パターンが多数見つかりすぎるため、被写体の動きを正確に検出できなくなる。そこで動き検出ブロックサイズを、対象となる動きオブジェクトの特徴に合わせて適応的に変更しながら検出を行っているという。

 もちろん、動き検出の工夫はこれだけではない。動き方向は画素単位で細かく見ているため、対象オブジェクトが変形しながら動くパターンでも、正確な中間像を生成できる。たとえば瞼の開け閉めがあると、目の形状がコマごとに変化するが、画素単位で動き方向を制御しているため、中間像を正しく作れる。

photo 「ピクセル単位動きベクトル検出技術」。瞼の開け閉めでは目の形状がコマごとに変化するが、1画素単位の綿密な予測で高精細画像もぼかさず生成できる

 倍速化技術を使うと、たとえばBSデジタル放送にあるような放送局のロゴが変形してしまうといったエラーが起きる場合があるが、画素単位の検出を行っているパワー・メタブレインではそのようなエラーは発生しない。加えて対象オブジェクトの回転や拡大縮小が発生しても、ただしい検出と中間像生成が行える。これも画素単位検出が可能にしたワザだ。

 最後に映画を正しい時間軸で見せる5-5プルダウン機能「5-5フィルムモード」についても触れておこう。これは24コマの映像を5枚づつ出画させることで、映画を映画らしく表示する機能だが、映画放送に合わせて1080iで放送されている映像も24コマで表示する機能を持っている。

photo 「5-5フィルムモード」。毎秒24コマのフィルムで製作された映画フィルムの独特の動き・質感を忠実に再現する

 これは2-3プルダウンで放送されている映画ソースを、逆2-3変換でプログレッシブ映像に変換した後、各コマを5枚づつに直して出画するという機能。24コマ収録されている市販ディスクだけでなく、すべての映画を高品質で楽しんでもらいたいという開発者の気持ちが込められた機能だ。

 このように、倍速化というトレンドに対しても、単純に対応するだけでなく、結果としての映像が本当に良くなることを考え、その解決策を探り、その解決策を実際の製品に反映するために半導体設計へとフィードバックする。

 縦割りの組織に縛られず、自由な体制で製品を改善することにグループ企業全体が一丸となって前へと進む体制が、一度は下位に沈んだ東芝のテレビ事業を復活させた。開発者たちは、すでに“次”に向けてのアイディアを練り、開発を進めているというが、この開発体制が維持される限り、また何か新しい驚きを我々に与えてくれるに違いない。

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提供:株式会社東芝
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2007年12月18日