“AQUOSクアトロン3D”の映像を一目見て、「おっ?」と軽い驚きを感じた。単に明るいだけではない。普通はトレードオフの関係にある「明るさ」と「クロストークの抑制」が見事に両立していたからだ。
シャープ独自の光配向技術「UV2A」を生かした4原色技術「クアトロン」。4原色化が画質にもたらすメリットは以前お伝えしたが、もう1つ、シャープ自身が訴求している利点として“3D表示時の画質向上”がある。3D対応の“AQUOSクアトロン3D”で画質評価可能なものができたと聞き、さっそく同社の視聴室を訪ねた。試聴機は60V型の「LC-60LV3」だ。
一般に3Dテレビは、走査線ごと順次走査で上から下へと画面を書き替えていく液晶テレビより、面全体を同時に発光させるプラズマテレビの方が構造的に有利とされる。フルHDでの3D表示を行うには、左目用/右目用の画面を高速で切り替えながら表示するフレームシーケンシャルという方式を用い、それを液晶シャッター付きのメガネを通して見るからだ。高速な画面切り替えと3Dメガネの同期は、画面全体を一気に書き替える(面書き替え)プラズマの方がタイミングを取りやすい。
ところがシャープは、クアトロンの3D画質に自信満々。視聴室に入ると、製品の説明を省いて「まずは見てください」とデモンストレーションを始めた。メーカーが予備知識を与える前に「体験して」と言うのは、製品の出来に自信を持っている証拠だ。説明は不要、一目瞭然というわけだ。
3Dテレビにおける画質のチェックポイントは大きく分けると3つある。1つめは明るさ、2つめにクロストーク(二重像)の低減、最後に色再現性。今年から登場した3Dテレビは、成熟が進む2D表示のテレビに比べ、メーカー間の画質差が大きい。2D画質の差はよく分からないという人でも、見るべきポイントを抑えると3Dの画質差はすぐに分かる。そしてLV3シリーズが3D表示において良い素性を持っていることは、その映像を見てすぐに理解できた。
まず明るさについてだが、確かに明るい。3Dメガネをかけた瞬間に認識できる。他社との違いは明らかで、比較する必要すら感じないほどだ。この点はライバルに対する大きなアドバンテージといえるだろう。
フレームシーケンシャル型の3Dテレビは、一般的に片眼あたりの光透過率が低く、メーカーによって異なるものの、およそ10%になってしまう。このため、明るい量販店の店内などでは画面が暗く見えてしまい、一般住宅でもリビングルームでも蛍光灯をフルに点灯していると暗く感じることがある。ところがLV3は、オフィスビルの室内という、かなり明るい環境でもまったくその明るさに負けないパワフルな絵を出していた。今年後半に多数投入予定のBlu-ray 3D規格による映画はもちろん、明るいリビングでもパワフルな映像を出せるLV3ならスポーツ放送やライブ中継などでも威力を発揮してくれるだろう。
さらに、リモコンに配置されている「3D明るさアップ」ボタンを押すと、簡単に画面の明るさを調整できる。規定値ではちょうど真ん中になっており、ボタンを押してさらに明るく元気のいい映像にできるほか、部屋の明かりを落としたときにはバックライトの輝度を下げて“ほどよい明るさ”にすることも可能だ。
3Dメガネに「3D-2D変換」ボタンが配置されているのもユニークだ。これは、3D映像を一時的に2D表示するもので、単純にいえば左右のうち片方の映像のみを見せるようにメガネを動かす機能である。例えば、子どもは3Dで見たいけれど、親は2Dで見たいなと思った場合などに使える。なかなか便利な機能といえる。
2Dの画質は、ハイグレードモデルのLX3シリーズに準ずるとのことだが、細かなチューニングは個別に行われているようだ。映画はとても素直で、素材をそのままストレートに液晶へと出そうという意図が見える。基本的にはLX3と同等だが、ビデオ系映像に関してはより力強い印象を受けた。もちろん、黄色画素が増えたことによる黄色や金色(濃く、輝度の高い黄色)の表現は圧倒的だ。最初にクアトロンの説明を聞いた時、イエロー画素を増やすことで色再現がリニアではない部分が増えてしまうのでは? と思ったが、この点も杞憂(きゆう)に終わった。
3D表示も可能なテレビであるため、どうしても3D画質に注目が集まりがちだが、実は3Dテレビは2D表示においても、従来機よりも高い実力を持っている点は考慮に入れておきたい。もっとも高画質なAQUOSが欲しいと思うのであれば、3D機能を抜きにしても、間違いなくLV3が現時点で最高峰だ。
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提供:シャープ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2010年9月14日