“音”だけで勝負する――フォステクス初の真空管ヘッドフォンアンプ「HP-V1」とカナル型イヤフォン「TE-05」に込めた思い野村ケンジが開発者に迫る(2/2 ページ)

» 2014年02月12日 10時00分 公開
[野村ケンジ,PR/ITmedia]
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音質のみを追求した製品を作りたかった――「HP-V1」

 もう1つの新製品「HP-V1」は、フォステクスとしては初となる真空管搭載のポータブルヘッドフォンアンプだ。冒頭で触れたように、同社のアンプ/USB-DAC系製品は、機能的な新しい提案を盛り込んでいるケースも多いが、今回はどうだろう。

机の上には「HP-A7」や「HP-P1」など歴代のフォステクス製品が並べられた(写真=左)。同社初の真空管搭載ポータブルヘッドフォンアンプ「HP-V1」。内蔵バッテリーで約10時間の連続駆動が可能だ。価格は税抜き5万2000円(写真=右)

 「確かに、これまでフォステクスのアンプ系/USB-DAC系製品では、音質追求に伴う何かしらの機能的な新提案がありました。例えば『HP-A7』までは、そもそもPCオーディオというスタイルがありませんでしたし、この価格帯で音質追求のため32bit DACを搭載したことも当時としては望外といえるスペックだったと思います。また、『HP-P1』に関しては、『ポータブルでも高音質』をというコンセプトでiPodデジタル接続を導入した“世界初”のポータブルヘッドフォンアンプであり、光デジタル出力を用意してDDCとして活用できることや、2タイプのデジタルフィルターを搭載することで好みの音色傾向を選べるなど、さまざまな新提案を盛り込みました」と振り返る内藤氏。しかし、今回の「HP-V1」については、「初めて手がけた真空管ポータブルヘッドフォンアンプではありますが、他社製品と異なる機能を持っているわけではありません」という。

 確かに「HP-V1」は、アナログ入力を増幅するだけのシンプルなヘッドフォンアンプだ。ある意味、近年のフォステクス製アンプらしからぬ仕様ともいえるが、理由を聞いて納得した。

 「以前、ガレージメーカーが作ったフルアナログタイプのポータブルヘッドフォンアンプを使ってみて、“音がいい”と思える製品にいくつか出会いました。いつか、フォステクスでもそうした“音の質感のみを追求し、提案する製品”が作れないかと考えていて、それを実現したのがこの『HP-V1』です」(内藤氏)。

「音の質感のみを追求した製品」が作りたかったという内藤氏(写真=左)。「HP-V1」のフロントパネル。電源を入れると、スリットから放熱も兼ね真空管の明かりが漏れる仕組みだ(写真=右)

 増幅部前段(入力段ともいう)に真空管、後段(出力段ともいう)にオペアンプをレイアウト、ハイブリッド方式を採用する「HP-V1」は、ロシア製「6N16B」サブミニチュア真空管や、長年スピーカーパーツを作ってきた強みを生かし新規開発のフォステクスオリジナル フィルムコンデンサーを搭載するなど、随所に音質に対してのこだわりが見られる。しかしながら、そのサウンドを一聴してみると、スペックだけでは説明できない確かな“驚き”があった。とてもシャープでスピード感のある、それでいて真空管アンプならではのきめ細やかさ、表現の豊かさを持ち合わせているのだ。

 内藤氏は、「数値的な特性をみると、当然ながらフラグシップ製品であるHP-A8などに比べて劣っています。しかし、音の表現力、今までとは違った質感の提案という意味では、なかなか素晴らしいものができあがりました」。

「HP-V1」の基板。増幅部の前段をロシア製「6N16B-Q」サブミニチュア真空管、後段をOPAMPで構成した。FOSTEXロゴが見える大型フィルムコンデンサーはオリジナルで起こしたものだ

 もともと真空管は、その能力をきちんと引き出してあげれば、かなりハイスピードなキレの良いサウンドになる。駆動力も高く、フォーカス感も良い。ただしポータブルアンプの場合は小さな筐体に収めなければならず、真空管の能力を発揮しきるのは難しい。結果、温かい、柔らかいといった音のイメージだけが残るアンプも見受けられる。

 一方で、HP-V1は真空管ならではのメリットや特性をうまく引き出し、その結果として従来の真空管ヘッドフォンアンプのイメージとは一線を画す、良質なサウンドを実現した。またサイズ的にはやや大きくなるものの、デザイン的に「HP-P1」との整合性がとれている点も興味深い。

 「この『HP-V1』は、『HP-A8』や『HP-P1』と同じデザイナーが手がけたので、共通するイメージがあると思いますが、加えて『HP-P1』を上に載せる、いわゆる“3段積み”を意識した外観に仕上げました。音質的にも整合性があるといいますか、『HP-P1』をさらにグレードアップしてくれますので、併せて使うのもお勧めです」(山口氏)。


 ダイナミック型にこだわった上級カナル型イヤフォン「TE-05」と、真空管ならではの良質さを徹底的に引き出したポータブルヘッドフォンアンプ「HP-V1」。どちらもフォステクスならではの音質に対する徹底的なこだわりから生まれた“渾身のモデル”といえる。それぞれの個性を、ぜひ皆さんにも体感してほしい。

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