CD購入のための検索機能をさらに強化してほしい HMV担当者に聞くAny Musicへの要望
HMVジャパンは、CD・DVD専門の通販サイトとしては、情報量と売上高で日本最大級を誇る。エニーミュージックに「CDショップ」サービスを提供しているHMVジャパンの青木洋平氏に、同社の提供するインターネットサービスの特徴、エニーミュージックへ求めるものを聞いた。

 エニーミュージックのサービスは、「音楽ダウンロード」+「CDショップ」+「FMオンエア情報」という主要3つのサービスで構成されている。そのうち、「CDショップ」サービスを提供しているのがHMVジャパンだ。

 エニーミュージックを通してHMVから購入できるCDの品揃えは約80万点。その豊富さに加えて、関東近郊ならばたいてい翌日、最短では24時間以内の出荷を実現するなど、リビングから今すぐCDが欲しいという要求に応えている。

 同社E-Commerceマーケティング部・プロダクト&マーケティングマネージャーの青木洋平氏に、同社の提供するインターネットサービスの特徴、エニーミュージックに求めるものを尋ねた。

コアな音楽ファンの要望に応える品揃えと迅速な配達がHMVのネットサービス

 「私たちが提供しているサービスにおいて、一番の特徴は80万タイトルという品揃えですね。アーティストのデータも30万人弱が収録されていますので、データベースとしても日本一の規模だと自負しています」

 青木氏がそう述べるよう、インターネットでCD購入ができるサービスとしては、同社のサービスは国内最大級。なおかつ同社は、このインターネット通販のために都内に約18万タイトルを保管する在庫センターを所有しており、最短24時間以内という迅速な出荷も可能にしている。この18万タイトルという数は数だけ出されると今ひとつピンとこないが、「通常のHMVの中型店舗並みの品揃え」というからその豊富さが伺える。

 「インターネットを利用した販売を始めたのは1999年の夏頃ですが、その後、在庫センターを持ち出荷サービスの充実を図り始めた頃から急激な伸びを示し始めました。弊社と同様に在庫センターを持つところとしてはAmazonがありますが、扱っている音楽CDの幅はこちらの方が広いので、Amazonでオンラインでの買い物に慣れたお客様が、こちらにいらっしゃいます(笑)。品揃えも情報も豊富なので、誰が演奏しているか、どこの国の盤なのかなど、ディテールにこだわる音楽ファンの要望に応えることができます」

 ユーザーの細かなディテールに答えられる情報量と品揃えの豊富さと、迅速な出荷体制。HMVのインターネット販売が音楽ファンに支持される理由はそこにある。ちなみに、インターネット販売ならではの傾向というものもあるという。

 「HMVのオンラインCD購入サービスを利用するお客様は、店舗に足を運んでくれるお客様よりも若干年齢層が高いのです。だいたい30歳前後でしょうか。売り上げも渋谷店のような大型店舗を超えるほどに成長してきていますので、急成長しているという実感がありますね」

 「店舗だと品物を手に取ってから検討するお客さんが多いのですが、インターネット販売では予約の比率が高いんです。それに店舗では在庫の関係でなかなか見つからない品物を探しに来るお客さんが多いですね」

 既に買いたいもの・聴きたいものが決まっているユーザーならば、自宅に配送もしてくれるインターネット販売を利用する方が手軽であるし、流通量の少ないCDを店の棚で一枚一枚探す手間も省ける。「昔聞いたあの曲をどうしても聴きたい!」というユーザーの要求にもスムーズに対応できるのはインターネット販売のメリットだ。

 それに、DVDボックスなどの高価商品が売れやすいというのもインターネット販売の特徴だという。「お店で大きなものを買って帰るのは大変ですし、インターネットならばクリック一つという手軽さがありますから」

エニーミュージックを通して、音楽の楽しみ方は変わるだろう

 リビングからCDをインターネット経由で注文する、というのはHMVがエニーミュージックからユーザーへ提供する新しい体験だが、単純にCDを注文するだけがすべてではない。エニーミュージックには、HMVの所有する豊富なデータベースを活用できるサービスも用意されている。

 FMラジオからリビングに流れてきた曲を耳にして、“いいかも”と思った瞬間にその曲名・アーティスト名を確認し、インターネット経由でHMVへCDを注文する「FM放送との連係機能」がそのサービスだ。これは豊富なデータベースを持つCDショップとFMラジオ放送、それらを有機的に連携させるプラットフォームが存在してこそのサービスといえる。

 このような新サービスを始め、iPodのヒットやHDDウォークマンの登場、新たな音楽配信サービスの開始など、音楽を聞く楽しみ方は確実に変化・拡大しつつある。青木氏は変化を迎えた新時代の音楽事情について、どう考えているのだろうか。

 「数年経てば、音楽の楽しみ方は今と大きく変わっているでしょう。ただ、その変化は予想もできません」。青木氏はそういうが、個人的な意見として「ダウンロード購入が全体の20〜25%ぐらいまでは占めるようになるのではないでしょうか」と、エニーミュージックが提供するような、音楽のダウンロード購入が増加するのではと予想する。

 また、そうした頃には、音楽業界全体とそれを取り巻く環境も変化しているのではないかともいう。「その頃には音楽業界もまた元気になっているでしょうし、インターネット経由でのCD販売も伸びてくるのではと思います。今、HMVジャパンにおけるインターネット販売が占める割合は全体の15〜20%程度。この数字がもっと伸びれば、メーカーも含めたいろいろな人の意見が変わってくると思います」

 そのなかで同社は、今後、インターネットの世界の中でどのようなポジションを占めたいと考えているのか。

 「まだ店舗のない四国在住の方の弊社ネット通販利用率は、他の地域に比較して低いのです。ですが、店舗とWebサイトはお互いに補完できる関係にあります。エニーミュージックとの提携も含めて、今後はインターネットの世界での認識度を高めることによって、HMV全体の認識度を高めていきたいですね。“インターネットで音楽といえばHMV“ “音楽を真摯に考えている、かっこいい店”と見ていただけるようになりたいです」

 青木氏は加えて「昔、HMVが渋谷系の音楽を発掘したみたいに、インディーズや新人の音楽をHMVがインターネット上から発信して、ファンが生まれていく、という流れを作り出せたらいいなと思います」とインターネット上への取り組みについて、夢を語る。

エニーミュージックにはさまざまな“広がり”を期待

 ブロードバンド世帯が2000万世帯を超えたとはいえ、インターネット上でのサービスを利用する数は、その数値と必ずしもイコールとはなっていない。同社では、エニーミュージックという新しいインターネット上のサービスを利用して、HMVという音楽専門店のブランド付けと新しい層の顧客開拓ができればと考える。

 現在、エニーミュージックを利用して同社から購入できるのはCDだけだが、同社ではDVDの販売も手がけていることから、将来的にはエニーミュージック経由でDVDの販売も行いたいという。青木氏は単にリビングからCDが買えるというだけではなく、さまざまな広がりをエニーミュージックに期待する。

 「エニーミュージックを利用すると、Moraで音楽の試聴ができますよね。その試聴ボタンの隣に“HMVでCDを購入する”というボタンがつくであるとか、サービス内で横のつながりが生まれればいいなと思います。Moraで試聴して、HMVで買うといった流れも用意されていれば、ユーザーとしてはありがたいはずです。データで購入するもよし、CDパッケージを購入するもよし。音楽を聴くという楽しみ方が広がってくれれば」

 音楽を聴く楽しみを広げるために――青木氏の願いは奇しくもレーベルゲート・山口氏の意見と同じ。既に同社は、店頭でiPodの販売を開始するなど、これまでのCDショップでは考えられなかった、“音楽を聴く楽しみを広げる”取り組みを始めている。エニーミュージック上でのサービス開始もその一環だ。

 また、エニーミュージックからCD購入を選択すると、「TOP 50 CD チャート」「予約チャート」「音楽ジャンル」「検索」などのメニューからCDを購入することになるが、青木氏は「検索機能などにもっとウチの色が出せれば」と意見を述べる。確かに、HMVのサイトと比較してしまうと、エニーミュージックでは、検索機能などに多少の差がある。

 「まだどういった層がエニーミュージックのコア層になるのか想像できないですが、エニーミュージックならではという価値観ができあがれば、と期待しています」というように、リビングからインターネットでCDを購入するという新しいスタイルを提案するエニーミュージックだからこそ、新しいユーザー層へアピールできるのだろう。

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渡邊宏,ITmedia]