「ダビング10」(2)――留意すべき“約束事”:デジモノ家電を読み解くキーワード
今年に入り対応ファームウェアの提供など、メーカー対応が活発化している「ダビング10」。登場までの経緯をまとめた前回に続き、今回はその「約束事」について解説する。
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ダビング10の「約束事」
ダビング10には“約束事”がある。実施後に即、どんなレコーダーでもコピー9回+ムーブ1回がOKになるわけではなく、いくつかの条件を満たすことが必要だ。
まず、対象機器にはHDDが搭載されていなければならない。コピー情報は録画元のHDDで管理されるため、HDD非搭載のレコーダーは対象外だ。HDD搭載機でも、DVDなどHDD以外のメディアへ直接録画した場合には、ダビング10ではなく従来どおりのコピーワンスとなる。
発売済みレコーダーは、メーカーが対応ファームウェアを提供しないかぎり、ダビング10は利用できない(コピーワンスのまま)。現在のところ、発売済み機種へ提供すると発表している家電メーカーには、ソニーとシャープ、パナソニックが挙げられる。
ダビングできるメディアは、社団法人電波産業会(ARIB)の技術資料で定められるコンテンツ保護方式、すなわちAACSかCPRMに対応していなければならない。
放送局側がダビング10の制御信号入り番組を提供しなければならないことも、留意しておきたい。1月31日現在、対応を表明しているのは地上デジタル放送のみで、しかも開始時期は「6月頃」。すべてのデジタル放送がダビング10に対応するわけではなく、BS/CSデジタル放送については未定だ。さらに地上デジタル放送も全番組がダビング10対応にはならず、コピーワンスの番組も一部残るとされている。
アナログ出力時のコピー回数は無制限、しかし……
ダビング10がアナウンスされたとき、ユーザー側から非難された事柄のひとつが、コピーのコピー、いわゆる“孫コピー”が一切認められないことだった。作成可能なコピーワンスのディスクが1枚から9枚に増えるだけで、根本的なコピーワンスの不便さは解消されていないというものだ。
そこで注目されるのが、アナログ出力時のコピー回数は無制限というデジタル10の仕様。アナログ出力に用いられるコピー防止技術「CGMS-A」は、視聴とコピー/ムーブを区別できないため、アナログ出力でコピー回数を制限しようとすると、再生は10回で打ち止めになってしまう。結果として、D端子やコンポジット端子などを利用したアナログ出力時のコピー回数は無制限とされたため、これに期待したユーザーは少なくなかったはずだ。
しかし、アナログ放送のときと同じ無制限のダビングが許されるわけではない。CGMS-A信号に含まれるコピー制御情報(CCI)には、「COG(Copy One Generation)」が記録されるため、やはりコピーのコピーや再エンコードはできない。“孫コピー禁止”の原則は、アナログ出力でも同様なのだ。
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