「ダビング10開始日」――Xデー間近、どうなる?:デジモノ家電を読み解くキーワード
コピーワンスの制限を緩和、一定の条件下でコピー9回+ムーブ1回を許すという「ダビング10」。開始“予定”Xデーの6月2日を間近に控えたその現況をお伝えする。
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6月2日の開始は「まず不可能」
コピーワンスが「録画した番組は複製できない」「異なる記録メディアへの移動(ムーブ)に失敗すると内容は失われる」という厳しい制約を持つのに対し、ダビング10はコピー9回+ムーブ1回までOKと制約を緩めたことが特徴だ。いわゆる孫コピーは不可、1世代のコピーしか許されずHDD非搭載のレコーダーは対象外になるなど、事態はさほど変わらないとの批判もあるが、家電メーカー側は早々に対応を表明した経緯がある。
そのダビング10、デジタル放送推進協会がアナウンスしていた6月2日午前4時のスタートが危ぶまれている。メーカーサイドから入手した情報によれば、現時点での正式運用開始日は確定しておらず、利用者や流通経路への告知期間として数カ月は必要なことを考慮すると、6月2日の開始はまず不可能とのこと。なぜこのような事態に陥ったのだろう?
ファームウェア更新の目的
現在のコピーワンス運用下では、該当する放送に「1世代のみコピー可」の信号(COG)が付加されているが、ダビング10運用下ではこのCOGに加え、コンテント利用記述子「copy_restriction_mode」が新たに運用開始される。レコーダーはこれまでCOGがある場合にそのコンテンツがコピーワンスとして判断していたが、今後はダビング10として信号を読み替えて判断し、COGと前述のコンテント利用記述子の双方がある場合に限りコピーワンスと判断するように改められる。ただし、前述のコンテント利用記述子は新たに運用されるものなので、既存製品はファームウェアのアップデートが必要となる。
つまり、送信側はこれまで通りの送信を行うものの、レコーダー側はダビング10としてそのコンテンツを受け取ることになる。このように家庭のレコーダー側がダビング10への対応を行うことで、送信側の仕様変更(とそれに伴う改修作業)を最小限に抑えることが可能となっている。
ダビング10での送信を行わない放送局(WOWOWなどの有料放送局)はコンテント利用記述子を送信するための改修が求められるが、無料放送局に比べると規模が小さいため、放送業界全体で考えるとコストを低く抑えられる、というわけだ。なお、最近のデジタル放送対応AV機器は放送波を使いファームウェアを更新する機能を備えているため、ユーザー側に費用負担は発生しない。
原因は「足並みをそろえること」
AV機器のファームウェアには、ダビング10がスタートする「Xデー」以降、前述した信号読み替え作業を行うようプログラムが施されることになるが、そのとき重要となるのが更新のタイミング。Xデーが確定していないかぎり、配布しても意味がないからだ。
Xデーが確定しない理由だが、業界団体であるデジタル放送推進協会からは、特に公式発表は行われていない。冒頭でメーカーサイドの非公式な見解を紹介したが、もはや6月2日のスタートは非現実的と言わざるを得ない。録音録画補償金の課金対象に関する議論との兼ね合いがあるにせよ、いち視聴者としては、可及的速やかにXデーを確定してほしいものだ。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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