シャープ、次世代液晶テレビのコア技術を披露
シャープは、テレビ向け次世代液晶パネルの光配向技術「UV2A」(ユーブイツーエー)を発表した。液晶パネルからリブやスリットといった構造をなくし、画質面でもさまざまな恩恵がある。
シャープは9月16日、テレビ向け次世代液晶パネルの光配向技術「UV2A」(ユーブイツーエー)を発表した。10月に稼働する堺新工場および亀山第2工場に全面導入する計画で、同技術を採用した“次世代液晶テレビ”が年内に登場する可能性も高い。
UV2Aは、紫外線(UV)と液晶パネルのVA方式をかけた名称(正式名称はUltraviolet induced multi-domain Vertical Alignment)。紫外線に反応する特殊な高分子薄膜を配向膜に用い、液晶分子の“並び”を紫外線の照射方向によって高精度に制御する。その精度はピコ(1兆分の1)メートル単位だ。
同社が採用してきたASV技術では、液晶分子の動きを細かく制御するために、画素を区切るリブやスリットといった構造を設けている。しかし、この「リブ・スリット法」は、構造やプロセスが複雑でコスト高。画質面でも「ほかの表示方式に比べて優位ではあるものの、さらなるコントラスト、応答速度の改善に課題がある」(シャープ常務執行役員研究開発本部長の水嶋繁光氏)。
UV2Aのメリットは、リブやスリットのないシンプルな構造の液晶パネルが製造できること。学会レベルでは30年ほど前から検討されていた、いわば“液晶技術者の夢”が、新しい材料と製造装置、プロセス開発の3つをそろえたことで初めて実現できたという。シンプルな構造の液晶パネルには、生産性の向上のみならず、画質面でも多くのメリットがある。
まず、余計な構造物(リブなど)がなくなって画素ごとの開口率が「すくなくとも従来比20%以上」アップする。また、同じく構造物に起因するバックライトの光漏れが抑制され、“黒”が締まる。同技術採用の次世代液晶パネルは、スタティックコントラスト(パネルコントラスト)で5000:1と、従来の液晶パネルに比べて1.6倍以上のコントラスト性能を持つという。
応答速度も従来の倍程度まで速くなる。これは、「従来技術では、すべての液晶分子に一度に配向規制力がかからず、一部の液晶分子から“ドミノ倒し”的に伝播応答していた。しかしUV2Aではすべての液晶分子が均一に応答する」ため。4ミリ秒以下の応答速度により、動画表示性能の向上はもちろん、既存の液晶パネルでは難しいといわれるフルHD/フルフレームの3D液晶テレビにも応用できるという。
水嶋氏によると、画素構造とプロセスがシンプルな次世代液晶パネルは、今後の大画面化や高精細化にも有利で、4K2Kやスーパーハイビジョンへの対応など、さまざまな応用が検討できるという。「UV2Aにより、シャープのテレビ用液晶パネルは第10世代のステージに入る(堺工場の第10世代マザーガラスにかけた表現)。幸い、堺工場の稼働に間にあった」(水嶋氏)。
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