隙のない進化を果たしたヤマハ「YSP-4100」:HDオーディオ対応(3/3 ページ)
ヤマハの「YSP-4100」は、HDオーディオ対応を果たした新世代のサウンドプロジェクターだ。手軽に設置できる一体型ボディーから出てくるリアルサラウンドは、従来の5.1chから7.1chへと進化。その音をじっくりと聴いてみた。
聖堂の高い天井に鳴り響く歌声
一体型フロントサラウンドシステムの使い方として、一番多いのは放送波、いわゆるテレビ番組の視聴だろう。ということで、まずはBSデジタル放送を録画したステレオ番組を試聴した。今回は、YSP-4100本体に同社製サブウーファー「NS-SW700」を接続している。
するとどうだろう、YSP-4100の置かれている壁側両端まで、スピーカー位置をまったく意識させない面構成のサウンドフィールドが広がったではないか。まるで壁全体がスピーカーになったかのよう。「セリーヌ・ディオン・ライヴ・イン・ラスベガス」では、ステージ両端まで拡がる演奏の真ん中で、彼女が力強く歌い上げている様子がひしひしと伝わってくる。さらに驚いたのは、会場にいるかのようなホール感も味わえることだ。
筆者は運良くこのライブをラスベガスで見ており、放送版があまりにもモニターライクな音声であることに対して少々不満を持っていたのだが、このYSP-4100では嫌味にならない程度のホール感を加味することで、その時に近い臨場感に味あわせてくれる。もちろん、実際の「シーザース・パレス」(ライブが行われたラスベスのホテル)のホールとは音のバランスや細部のニュアンスは異なっている。しかしながら、ライブならではの臨場感を存分に味わえるという点では、かなり魅力的なサウンドエフェクトだと思えた。
ちなみにYSP-4100には、ステレオ音声をそのまま再生する「ステレオ」モードも用意されているが、こちらに変更したとたん、サウンドフィールドが本体両端以内まで小さくなってしまうので、個人的にはあまりオススメしない。サラウンドエフェクトの上質さからいって、「5ビーム+2」または「5ビーム」をデフォルトとしておきたい。
一方、5.1chソースの再生もなかなかのもの。BSデジタル放送の「サラ・ブライトマン シュテファン大聖堂ライブ」では、聖堂の高い天井に鳴り響く歌声を見事に再現。左右だけでなく上方向への音の広がりも得意とする、YSPシリーズならではの音の広がりが垣間見えた。人によっては「音に厚みがない」と否定されてしまうデジタル放送のAAC音声だが、少なくともYSP-4100では、独自のサラウンド効果でそういったデメリットをうまく解消していた。放送番組に関しては、サラウンド感も音の印象も、存分に楽しめるセッティングに仕上げられているといえるだろう。
続いて映画のBlu-ray Discソフトをいくつか再生した。こちらに関してもなかなかの感触。まずサラウンドフィールドに関して、5.1chではスピーカーをリアル配置したシステムに肉薄するほどの完成度を誇っている。また、実際にスピーカーを配置した場合でも、スピーカー間の“音切れ”(音のない空間を感じてしまうこと)が問題になるケースはあるが、YSP-4100ではそれがない。この音を一体型フロントサラウンドシステムで味わえるとは驚きだ。一方、7.1chはというと、追加されたサラウンドバック音声は他チャンネルのようにリアルスピーカー同然とはいかないものの、きちんと後方からの音声として識別できるから素晴らしい。
弱点をあげるとすれば、薄型ボディゆえの低音ボリュームだろう。試しにサブウーファーをオフにしてみると、途端にサウンドの重心が高くなってしまい、きれいではあるが印象の薄い音になる。YSP-4100には低音を補強する「BASS EXTENSION」設定もあるが、やはりサブウーファーの併用をオススメしたい。
とはいえこのYSP-4100は、一体型フロントサラウンドシステムのイメージを覆す、優秀な製品であることは確かだ。先代も素晴らしいモデルだったが、最新フォーマットへの対応と多機能さが加わることで、より高いところへ進化した。下手な5.1chシステムを設置するより、YSP-4100の方が手軽に上質なサラウンドを楽しめる。それは紛れもない事実だ。
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