デジタル時代のAVアンプは「DSP」で決まる:デジモノ家電を読み解くキーワード
音声や映像のデータは膨大で、リアルタイム処理には高い演算性能が要求される。それを解決する半導体チップ「DSP」は、いまやデジタルオーディオ機器に不可欠な存在だ。今回は、そのDSPの役割を解説してみよう。
そもそも「DSP」とは?
一般的に「DSP」とは、Digital Signal Processor(デジタル信号処理装置)の略称として用いられ、デジタル信号の処理に特化した半導体チップを指す。さまざまな演算処理を担うという点では、パソコンにおける中央演算装置(CPU)と同様だが、デジタル化された音声信号のように単純かつ膨大なデータを高速処理することに長けている。
CPUと比較したときの特徴としては、大量のデータを扱うための大容量メモリと強力なI/O回路、1命令単位で乗算と加算を処理できる積和演算器、繰返し処理のための専用命令などを挙げることができる。リアルタイム性が重要なデジタル信号の処理、例えば音声データの圧縮/伸張処理では、乗算や積和演算の高速性がとても重要な意味を持つため、現在では携帯電話やデジタルカメラにも多く採用されている。
進むオーディオ分野での採用
急速なデジタル化が進行中のオーディオ機器分野において、DSPは重要なポジションを確保している。ポータブルオーディオにおけるサウンドの圧縮/伸長処理はその1つで、MP3やWMA、AACなどのフォーマットに対応することを可能にした。
ホームシアター用AVアンプの分野においても、DSPは以前から重要な位置を占めている。DVDやBlu-ray Discには、ドルビーデジタルやdtsなどの高音質音声データが圧縮された状態で記録されているものが多く、デジタル化されたアンプはそれらデータをデジタルのまま増幅、スピーカーから音が出る直前まで無劣化で保持できる。
ヤマハが提唱する音場再現システム「シネマDSP」(このDSPは“デジタル・サウンドフィールド・プロセッサー”の意味)では、実測の音場データに基づくプログラムにより、元の音声に”反射音“という効果を加え、より立体的かつ豊かなサラウンド再生を行なう。最近では、高さ方向の音場データを含む「3Dモード」を装備。こうした膨大な量のデータをリアルタイムに処理することが可能になったのも、半導体チップとしてのDSPあってこそだ。
3Dで再び注目を集める「DSP」
Blu-ray DiscのHDオーディオ対応が当たり前になったAVアンプだが、ここにきてエントリーモデルにも注目が集まっている。例えばヤマハが6月に発売する「RX-V467」と「RX-V567」(関連記事)は、店頭予想価格5万円台という低価格ながら、3Dコンテンツの伝送に対応したHDMI 1.4a端子を装備(入力×4/出力×1)するなど、トレンドを押さえた点が魅力だ。また、HDオーディオとシネマDSPを組み合わせて再生できるようになった点も特長。もともと音場の奥行き感を重視して設計されているシネマDSPのため、Blu-ray 3Dなどの3D映像と相性がいいことは容易に想像できるだろう。
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