飛び抜けた実力を示すシャープの4原色3Dテレビ技術:本田雅一のTV Style
5月中に3Dテレビを発表するというシャープ。その試作機は、ほかの3Dテレビを知っている人なら確実に驚くであろう、明るさと鮮やかな色を持っていた。
先日、シャープのデモクリップや上海万博の映像など、多数の高品質映像制作を手がけるある有名なCG・映像作家の知人と食事をしていた時のこと。3D映像に興味を持つ者同士で集まったちょっとした集まりだったのだが、筆者が「今年の3Dテレビ。品質で言えば、パナソニックのプラズマ、ほとんどの液晶テレビと2つのグループに分かれると考えていたが、シャープの4原色3Dテレビはほかの液晶とは見え方が違う。まるで別カテゴリーの製品のようだ」と話したら、一気にボルテージが上がって「まったく、そうなんですよ! あれは凄いんだ!」と盛り上がった。
4月中旬に3Dテレビの技術発表を行ったシャープ(→4つの技術で“明るい”3Dテレビ、シャープが製品化へ)。5月中には製品を発表する予定で、夏商戦に間に合わせるとしている。もちろん、映像作品を見るためのディスプレイとして、どこまで良いものか? については、製品が登場してゆっくりと評価しなければならない。後述するように、まだすべての疑問が解決したわけではないからだ。しかし、ほかの3Dテレビを経験したことがある人なら、あまりの違いに驚くに違いない。シャープが公開した試作機には、それだけのインパクトがあった。
なにしろ、ほかの3D液晶テレビに比べ少なくとも2倍は明るく感じられ、その上、クロストークも非常に少ない。プラズマと同様、頭を傾けても画面が暗くはならない。さらにメガネを通して見た時の発色が良く、鮮やかなのである。デモ用のスペシャルチューンではないか? とも疑ったが、どうやらまだ開発途中、チューニング途中で、これからまだまだ良くなっていくようだ。
製品改善の要素としては、UV2A技術、RGBにY(イエロー)を加えた4原色技術、さらに240Hz駆動を実現するFRED(Frame Rate Enhanced Driving)技術やLEDバックライトにより、テレビの光利用効率を従来モデル比で約1.8倍にまで向上させているというから、2倍は明るく感じるというのも、あながちいい加減なものではないかもしれない。
シャープによると3Dメガネ越しの場合、実効の明るさは10〜60カンデラであるのに対して、同社の試作機は100カンデラを実現しているとか。液晶テレビの場合、3D品位を上げるには明るさを犠牲にしなければならないのが一般的のため、ここまで明るい状態で、かつクロストークが少ないというのはちょっと驚きだ。
さらにイエローの色域を拡張しているためだろうか。青に寄りがちな3Dメガネを通しての映像が、かなり自然に見えた。通常、3Dメガネを通した映像がニュートラルになるようホワイトバランスを調整するのだが、色再現範囲には限界があるため、どうしても黄色側の発色は弱くなりがち。しかし、シャープの試作機では、3Dメガネ越しにもしっかりと黄色が出ていた。
素晴らしいことばかりに聞こえるが、その長所の多くが4原色化から来ているとするならば、慎重に評価したいとも思う。なぜなら、原色の数を増やすと原理的には明るさを稼げ、色再現範囲も広くなって良いことばかりのように思えるが、多くの場合、多原色によるシステムは明るさ変化に対するホワイトバランスが不安定にブレる傾向がある。デジタルの階調で表現している液晶テレビならなおさらだ。
結論を出すにはまだ早すぎる。しかしシャープの4原色3Dテレビは、液晶方式の3D表示品位に対するイメージを大きく変える潜在力があるとは言えそうだ。
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