魅惑のオーディオアクセサリー:麻倉怜士のデジタル閻魔帳(3/3 ページ)
オーディオアクセサリーの中には、驚くほど効果のあるものが存在する。AV評論家・麻倉怜士氏が驚き、愛用している“お気に入り”の製品をピックアップしてもらった。
オーディオ的なBluetoothスピーカー
麻倉氏: ちょっと趣向を変えて、ポータブル機器向けの2.4GHzワイヤレススピーカーを紹介したいと思います。先日、audio pro(オーディオプロ)のアクティブワイヤレススピーカー「LV2」を試聴したところ、オーディオ的にも楽しめる音で良かったです。
audio proは、スウェーデンのスピーカーメーカーです。ご存じの通り、北欧はワイヤレス技術の進んだ地域。その土壌があるためか、2.4GHz帯のワイヤレス伝送で、かつ音の良い製品が出てきましたね。LV2は、ロッキーインターナショナルが6月末に発売する予定です。とにかく、この手の“飛ばすオーディオ”は音質劣悪が常識でしたが、LV2は常識外れに音が良いです。
FOSTEX製6.5センチスピーカーが付録になった
麻倉氏: 最近、ファッション誌ではブランドとのコラボレーションでポーチなどの実用品を付録にするケースが増えていますが、その流れがいよいよオーディオビジュアルの世界にもやってきました。
実は、6月19日に発売されたオーディオ総合誌「Stereo」7月号(音楽之友社)には、スピーカーメーカーのFOSTEXとの共同企画として、6.5センチの本格的なフルレンジスピーカーユニットキットを付録にします。ユニットは市販していない特注品で、参考価格は3150円だそうです。それが雑誌について2310円ですから、かなりお買い得ですね。
“自作スピーカー”もオーディオの楽しみ方の1つですし、オーディオ機器そのものを付録にするという新しい提案も面白いです。これまでもCDやDVDを付録にするケースは多くありましたが、今後はより音質のいい音源を収録したUSBメモリを付録にするなどといった展開も期待できるかもしれません。オーディオ誌自体をスピーカーボックスにするなど、さらに大胆なアイデアもいいでしょう。
麻倉氏: 今回は、オーディオアクセサリーを中心に紹介してきました。アクセサリーは、手持ちの機材をうまく工夫して音質アップにつなげるものです。とくに最近のアクセサリーは、AVシステム全体を改善させるパワフルなものも出ています。本体の買い替えは難しくても、アクセサリーの使い方次第で実力を100%から200%や300%にもできますので、うまく活用していきましょう。これもオーディオの楽しみ方の1つですね。
麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴
1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNの CD12、JBLのProject K2/S9500など、世界最高の銘機を愛用している“音質の鬼”でもある。音楽理論も専門分野。
現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。
著作
「ホームシアターの作法」(ソフトバンク新書、2009年)――初心者以上マニア未満のAVファンへ贈る、実用的なホームシアター指南書。
「究極のテレビを創れ!」(技術評論社、2009年)――高画質への闘いを挑んだ技術者を追った「オーディオの作法」(ソフトバンククリエイティブ、2008年)――音楽を楽しむための、よい音と付き合う64の作法
「絶対ハイビジョン主義」(アスキー新書、2008年)――身近になったハイビジョンの世界を堪能しつくすためのバイブル
「やっぱり楽しいオーディオ生活」(アスキー新書、2007年)――「音楽」をさらに感動的に楽しむための、デジタル時代のオーディオ使いこなし術指南書
「松下電器のBlu-rayDisc大戦略」(日経BP社、2006年)──Blu-ray陣営のなかで本家ソニーを上回る製品開発力を見せた松下の製品開発ヒストリーに焦点を当てる
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)──ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)──プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)──ソニーのネットワーク戦略
「DVD──12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)──DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)──記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)──互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)──プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)──新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)──シャープの鋭い商品開発のドキュメント
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