2010年版、麻倉怜士の“デジタルトップ10”(後編):麻倉怜士のデジタル閻魔帳(3/3 ページ)
AV評論家・麻倉怜士氏がこの一年を振り返り、特に印象に残ったモノをハード・ソフト問わずにランキング形式で紹介する、恒例「麻倉怜士のデジタルトップ10」。後編では第6位からカウントダウンを再開しよう。
第1位:ビクター「DLA-X9」(ビクター、3D対応プロジェクターにプレミアムモデル「DLA-X9」)
――第1位のビクター「DLA-X9」は、D-ILA素子の中で良い物を選んで作り上げたプレミアムモデルです。ベースモデルのDLA-X7のコントラスト比が7万:1に対して、DLA-X9では10万:1を実現しています
麻倉氏: 3Dの時代がやってきて、今年は年末になって3D映像を楽しむ環境としてフロントプロジェクターが加わりました。日常とは違う空間にいざなってくれるのが3Dであるとすれば、これほど3Dに適した製品はありません。大きなスクリーン以外、目に入らなくなりますからね。今年はソニーとビクターから3D対応のプロジェクターが発売されましたが、2Dと3Dの両方がすばらしいという意味でビクターの「DLA-X9」がイチバンだと思います。
まず2Dの表現に関してですが、映画とテレビでは色を作り出す仕組みが異なります。フィルムは減法混色、テレビは加法混色です。ビクターのプロジェクターは、フィルムを研究して、その特性を生かした形で見せてくれます。
画質モード「フィルム」を選択すると、「Film1」「Film2」というカラープロファイルが選べます。これは、「コダック」と「富士写真フイルム」という2社のフィルムに合わせたもの。例えば、「キミに読む物語」は富士のフィルムで撮影したものですが、それを見ると、今まで見てきたものと違うことが分かります。映画で表現された光のあり方を忠実に再現しようとしている、ビクターならではの切り口ですね。
一方の3D表現について話す前に、現在の3Dテレビの課題をおさらいしておきましょう。それは、専用の3Dメガネかけると画面が暗くなる、二重像(クロストーク)が見えるといった点です。クロストークを抑えようとすると、さらに画面が暗くなってしまい、この矛盾にメーカー各社の技術者は悩まされています。
ビクターの3Dプロジェクターは、画面が明るく、その上クロストークが非常に少ないことが特長です。例えば、BD-ROMの「アドベンチャー・イン・グランドキャニオン」のチャプター6に入っている汽車が走るシーン。車輪が光る、とてもクロストークが出やすい場面です。3Dテレビでここにクロストークが出ないものはありません。しかし、DLA-X9で観るとほとんど感じられないのです。
クロストークが出にくい理由は、全画素を一度に描き出す、いわばプラズマの面発光と同じ近い仕組みを実現したことです。ソニー製品では240Hz駆動にして、クロストークの出ている部分を消す方法を採用していますが、プロジェクターの場合はLEDバックライトのテレビと異なり、光源を部分的に消すことはできません。全体を消すことになると、やはり画面は暗くなります。対してビクター製品は根本的に描き方が異なり、それが見やすさにつながっていますね。
来年夏のアナログ停波でテレビを皆が一生懸命買う時代は終わり、その後はBlu-ray Discをゆっくり楽しむ時代になるでしょう。そのとき、2Dも3Dも良く見せてくれる、しかも小さなテレビを圧倒的に上回る3Dの迫力で見られるという意味で、ビクターのDLA-X9を2010年の第1位にしたいと思います。
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