半導体至上主義の先を見据えた東芝“REGZA”(3):本田雅一のTV Style
「レグザエンジンCEVO」は、LSIを増やして処理能力を向上させることができるが、それはグラスレス3D機能のためだけではない。むしろ本命といえるのが、4K×2Kパネルでの高画質2D表示だ。
前回からやや間が空いてしまったが、東芝が「レグザエンジンCEVO」をスケーラブルに、すなわちLSIを増やすことでパフォーマンスを向上させやすい構造にした理由は、将来の4K×2Kパネルを見据えていたからだ。
今年1月のInternational CESで、東芝は4K×2Kパネルを搭載した「グラスレス3Dレグザ」を発売すると宣言している(→東芝、2011年度に大型のグラスレス3Dレグザを投入)。これが秋のタイミングで披露されることは間違いない。この製品は液体レンズを用いた電気的にオン/オフが可能な裸眼3Dを実現する。
裸眼3Dを実現するには、両眼視差の映像から別の位置から見た映像を作らねばならないため、非常に大きな計算能力が必要になる。昨年発売されたグラスレス3Dレグザ「20GL1」「12GL1」では、視差画像生成のためにCELLプロセッサのパワーをまるまる使っていたほどだ。
そのために高いパフォーマンスが必要になる一方、レグザエンジンCEVOは20インチ台のテレビにも使われている。実はわたしも個人的に書斎に、PCのセカンドディスプレイ兼用で「26ZP2」を導入したが、こうした小型テレビから大型のグラスレス3Dテレビまでを幅広く、1つのアーキテクチャで支えることで、開発資源の効率化を図っているわけだ。
しかし、東芝が本命としているのはグラスレス3D機能ではなく、4K×2Kパネルでの高画質である。もちろん、Blu-ray Discなどの市販ビデオソフトはもちろん、放送波も最高でフルHD(1920×1080ピクセル)であり、そのままで4K×2Kパネルの解像度を生かすことはできない。
複数フレーム超解像を加え、映像全体のS/N感を向上させつつ、映像の情報量を最大限に高める。それを4K×2Kの画素数にギュッと凝縮し、ZG2シリーズなどで実現されているレベルの画質を実現する。そのためには並列化による半導体パワーの追加が不可欠だ。
前世代のプラットフォームであった「メタブレイン・プロ」は、ひたすらにオーバースペックなプラットフォームを、必要に応じて建て増ししていた。これは当時の事情を考えれば致し方ない面もある。しかし新たな世代となり、今度は毎年のステップアップを前提にしたスケーラブルなプラットフォームとして映像エンジンの基盤を作ることで、ノウハウを継承しながら前へと進む道筋を作ったといえる。
今回の連載タイトルを”半導体至上主義の先”と題したのは、そうした意志を込めてのものだ。おそらく今後数年は、このプラットフォームの上に価値を創造していくのだろう。そうした意味でも、どこまでの進化を支えることができるのか、興味深い事例になってほしいものだ。
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