「VPL-VW1000ES」で変わるBlu-ray Discの画質:山本浩司の「アレを観るなら是非コレで!」(2/2 ページ)
個人的にいちばん欲しい製品「VPL-VW1000ES」。ぼくが驚いたのは、デモ用の4Kネイティブ映像より、Blu-ray Disc画質のすばらしさだった。
SXRDパネルの高精細な表現力を支えるべく、光学系にも力が注がれている。「4Kオールレンジクリスプフォーカスレンズ」と命名された7群18枚構成のオールガラスレンズがおごられており、センターと周辺のフォーカス差をほぼ理論値限界まで追い込んだいう。前ダマ径はVPL-VW95ESの2倍近い大きさ。家庭用固定画素プロジェクターとしては空前のゴージャスなレンズといっていいだろう。レンズシフト量は上下80%、左右30%で、2.1倍電動ズーム機能が装備されている。
なお、本機はシネスコサイズのスクリーンを張ったときにワンタッチでスコープサイズと16:9サイズが切り替えられる5つの「レンズポジションメモリー」も用意されていることにも注目したい。
さて、HDコンテンツを4K解像度に変換する注目のスケーラー機能だが、これはソニーが十数年前から研究を重ねてきたDRC(デジタル・リアリティ・クリエーション)のバリエーション。HD入力信号の縦・横・斜めの被写体の動きを解析し、蓄積したデータベースから最適なパターンを照合してマッピングするというソニー製テレビでおなじみの「X-Reality PRO」の4Kプロジェクター版である。その完成度はきわめて高く、その後さまざまなBD-ROMを見てきたが、じつに見事な解像度変換が行なわれており、大きな瑕疵(かし)を見つけることはできなかった。
映像モードは全部で9つ。以前の同社製プロジェクターの「シネマ」系モードは、ポジフィルムの特性を参照した『フィルム1』『フィルム2』とDCI規格に合致させた『デジタル』に集約され、ソニー製マスターモニターの画調を目指した従来の『シネマ3』は『リファレンス』と名称変更されている。
本機はもちろん3D対応機。330ワットランプの採用でじゅうぶんな光出力が実現されているため、VPL-VW30ESやVPL-VW95ESで採用された、3Dメガネが開いているときだけランプ輝度を持ち上げる「ダイナミックランプコントロール」技術は採用されていない。
つい先日も最近お気に入りのBD ROMを本機でまとめて観る機会があったが、その表現力の豊かさに改めて感心した。とくに『フィルム1』モードで観る映画ソフトの画質がすばらしく、コーエン兄弟が監督した「トゥルー・グリット」やロマン・ポランスキー監督の「ゴーストライター」などのBD ROMを観ながら何度もため息をついた。どのソフトを観ても、4Kプロジェクターならではの持ち味と思わせる、尖鋭度の高い繊細で味わいの濃いフィルムルックが実現されているのだ。
この点が、e-shiftテクノロジーと呼ばれる画素ずらしの手法を用いて4K表示を実現したJVC「DLA-X70/90R」との違いだろう。表示パネルそのものはHD解像度であるDLA-X70/90Rは、4K/8Kスキャン&4Kオーサリングなどを経た「4Kの残滓(ざんし)」というか、その残り香がある映画コンテンツ限定で4Kの魅力が味わえる印象なのである。
VPL-VW1000ESでやや物足りなく思うのは、Blu-ray 3Dの画質。用意された3Dソフト用の映像モードの画質は、330ワットの高出力ランプの魅力を生かしているとは思えず、それなりの画質調整を施す必要がある。余談だが、現状の家庭用プロジェクターで、個人的にBlu-ray 3Dの画質がいちばんよいと思えるのは、透過型液晶タイプのエプソン「EH-TW8000」とDLP方式の三菱電機「LVP-HC7800D」である。
それから、330ワットという高出力ランプを採用しているせいか、本機はやや寝起きが悪いタイプ。電源を入れてから本調子の画質になるまで数十分かかる印象だ。オーディオ機器もそうだが、本格派の製品はえてしてこういうキャラクターも持ってるケースが多いものである。
さて、自室に本機VPL-VW1000ESに導入するかどうかだが、じつを言うとすごく迷っている。現状のぼくの部屋は、理想と思えるステレオ配置を実践した大型フロア型スピーカーのJBL「K2S9900」の内側いっぱいに110インチ・スクリーンが降りてくるようにしているが、この部屋で1.5H視聴を実現するとすれば、JBLの大型スピーカーの前にスクリーンを下ろすことになり、そうするとサウンド(孔開き)スクリーンを使わざるを得ず、今の音質を維持できるかどうかが心配だし、サウンドホールとの干渉でモアレが出るかもしれないし……といろいろ心配事があって、まだオーダーに踏み切れないでいるのだ。本機の画質の魅力を十全に味わうには絶対110インチでは小さいし。
しかし、1.5Hの眼前いっぱいに120インチ強のシネスコスクリーンを張って、4Kの高精細映像を楽しむという観賞法は、映画ファンにとってまさに憧れのスタイル。なんとか実現したいと思っているのだが、まずは財布との相談から始めないと……。
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「見る」から「感じる」映像へ。フルHDの4倍を超える解像度で、新たな映像体験と感動をもたらす、家庭用「4K“SXRD”」プロジェクター。価格は151万2000円(税込/3月23日現在)
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