4K活用のシネスコは“劇場の世界”、ソニーとJVCのイベントで気づいた効果(2):麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/2 ページ)
JVC「DLA-X90R」やソニー「VPL-VW1000ES」といった4Kプロジェクターの体験イベントに出演する機会の多い麻倉怜士氏。前回に続き、4Kプロジェクターに適した映像コンテンツや、その使いこなしについて話を聞いていこう。
4Kを活用した21:9再生は“劇場の世界”
麻倉氏:イベントを通じて、もう1つ感動したことが、21:9のワイドスクリーン上映です。現在はテレビもプロジェクターも16:9のアスペクト比が基本ですが、4Kプロジェクターの登場によって、もっとワイドな世界――つまり21:9が見えてきました。
BD-ROMでは、ほとんどの映画作品がレターボックスサイズで収録されていますが、考えてみると2重におかしいですよね。黒帯が入っていることに加え、黒帯があるために垂直解像度が落ちているのですから。
このため、ハイエンドホームシアターファンの一部は、21:9のスクリーンを用意し、あらかじめ垂直方向に引き延ばした映像をアナモフィック・レンズで横方向に引き延ばすという凝った手法でプロジェクターが持つ解像度をフルに活用しています。とはいえ、これは結構大変ですし、レンズは数十万円もしますからコストもかかります。
一方、ズームレンズで画面を大きくすることで、黒帯をスクリーンの外に出してしまうアプローチもありました。パナソニックやエプソンのプロジェクターに採用されていましたが、これでは単純拡大なので解像度も下がってしまいます。
そこで、4Kプロジェクターとワイドスクリーンの活用です。JVCは、4Kでズームする手法を考えました。4Kプロジェクターなら、垂直で2160本ものラインを持っていますから、上下を画面の外に追い出しても残りが1800本程度はあるわけです。ズームしても映像がボケることはありません。こうしてジャストなフレーミングにすると、ホームシアターであっても“劇場の世界”が広がる印象でした。
ホームシアターの世界で、4Kプロジェクターは従来では考えられなかった感動を与えてくれたと思います。画質における細やかな表現、臨場感、リアリティーにくわえ、上映方法による感動の効果も合わせ、映画館で見るような効果が多くの作品で享受できることが分かりました。このことが、今回のツアーで最も大きな収穫でしたね。
ーー最後に2つのプロジェクターの傾向の違いを教えてください
麻倉氏:JVCは画素ずらしの手法で1/4画素を作る手法で4K化しています(3840×2160ピクセル)。一方のソニーはそもそも画素数がリアルで、DCI規格と同じ4096×2160ピクセルを持っています。映像を比較すると、ソニーはあふれんばかりの情報量、一方のJVCは熱き情緒性を感じるところが異なります。ビクターは画の中から、えもいわれぬ感動を引き出しています。唇の色っぽさとか、演出性というか、メッセージ性を高めている。これは何かというと、いかに人を感動させる映像を作るかという点に注力して成果だと思います。情報だけでは語れない情緒性を加えたところが違いですね。
JVCケンウッドは「DLA-X90R」(左)と「DLA-X70R」という2機種の4K対応機をラインアップ。DLA-X90Rは、厳選したパーツを使い、ネイティブコントラスト12万:1を実現したプレミアムモデルという位置づけ。外観上は前面のエンブレムプレートが違いになる
それから、ソニーはハイエンド性を追求した製品です。私の持っている「QUALIA 004」の4倍の解像度を持ちながら、価格を168万円に抑えたところはソニーとしても英断だったと思います。これをトップとして、より普及価格帯へいくと考えられますし、キセノンランプにしたさらに高級品も考えられるでしょう。
今後は、もっと4K製品の競争が起きるといいと思います。現在はLCOSだけ(Liquid crystal on silicon、SXRDとD-ILAはいずれもLCOSに分類される)ですが、これにDLPや液晶が加わると、1つのジャンルとして確立できます。残りのデバイスにもがんばってほしいですね。
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