ゼンハイザー、注目のカナル型イヤフォン「IE800」などハイエンド機器を披露:IFA GPC 2012
「IFA2012」の前哨戦ともいえるプレス向けカンファレンス「IFA Global Press Conference 2012」では、ゼンハイザーが新しいハイエンドヘッドフォン「HD700」およびカナル型イヤフォンの「IE800」を披露した。
欧州最大の家電展示会「IFA2012」――その前哨戦ともいえるプレス向けカンファレンス「IFA Global Press Conference 2012」がクロアチア・ドゥブロブニクのホテルで今週開催される。今年のIFAは8月31日から9月5日まで開催されるが、展示内容を先取りする形で業界のトレンドや各メーカーの戦略を知る機会となっている。
開催に先立って行われた「Power Briefing」では、数社が今年の家電市場における展望についてアナウンスを行う。今年のテーマの1つはスマートテレビ、ネットワークサービスと家電の融合といったものだが、さらにパーソナルオーディオ製品にも各社とも力を入れているようだ。
例えばフィリップスは、今年もオーディオブランド「Fidelo」(フィデリオ)の訴求につとめていた。フィリップスと言えば、かつては高音質のレコード/CDレーベルから、各種オーディオコンポーネントまで、本格的なオーディオ機器をラインアップした名門でもあるが、今回はインターネット、ホームネットワーク、それにクラウドといったテクノロジートレンドや、ポータブルデジタルオーディオプレーヤーの普及などを背景にした、高音質かつデザインコンシャスな製品コンセプトで展開している。
フィリップスは、”ライフスタイルエンターテイメント”というテーマで、その背景を説明する。かつてコンテンツを搬送するメディアが、アナログから光ディスクへと変化。そして、それらがデジタル化し、ネットワークを通じた流通へと変化し、さらにはクラウドの時代へと突入している。
ライフスタイルエンターテインメントを楽しむからには、当然、良い音、良いデザインといった従来からの価値も重要だが、さらにその上で、あらゆる機器がコンテンツそのものとつながっていく使い方を描けなければならない。
Fidelioは、iPhone、iPad、それにDLNAを用いたネットワークオーディオとワイヤレス(Hi-Fi)を基本に置き、そこから優れた操作性とデザイン、それにコンポーネントスタイルの高品位オーディオを指向したものだ。
単に新しいオーディオトレンドに対応しただけでも、デザインに注力しただけでもなく、音質という従来からの価値観に対して正面から取り組んでいるのが、ブランドとしての特長とのこと。コンポーネントやスピーカーだけでなく、「Fidelio M1」というヘッドフォンも用意する。
世界的にもオーディオ市場は伸びているが、どちらかといえばデジタルオーディオプレーヤー、スマートフォン、ヘッドフォン(イヤフォン)などのトレンドをキャッチアップした新興メーカーが多い。日本ではまだ一部の製品しか投入されていないが、デザインと音質を上手に融合し、伝統的な音質での差異化に手頃な価格で取り組めるのなら、そこには市場開拓の余地があるのかもしれない。
ゼンハイザーのハイエンドカナル、192/24対応のヘッドフォンアンプ
一方、日本でも人気の高いヘッドフォンメーカー、ゼンハイザーの新ラインアップ発表は興味深いところ。1月のCESで披露した新しいハイエンドヘッドフォン「HD700」に加え、同じくハイエンド・カナル型イヤフォンの「IE800」、192KHz/24bitのデジタルソースに対応したDAC内蔵デジタルヘッドフォンアンプの「HDVD800」を披露した。
HD700は5月発売ということで、会場には製品バージョンが持ち込まれている。価格は上位機「HD800」に比べてはるかに安価とはいえ、699ユーロとハイエンド製品であることに変わりはない。45ミリ径の新開発ドライバーユニット、亜鉛合金ダイキャストのフレーム、マイクロファイバーによるイヤーパッド、耳たぶを圧迫しない余裕のあるハウジングデザインなど、快適性はさすが。かけ心地はHD800と何ら変わるところはない。
ただし、音質はまったく別物。HD800は、フラットなエネルギーバランスで低ひずみ。情報量たっぷりで音場感、ウェット感もしっかりと聴かせるものの、かなりさりげない味付けのHi-Fi指向なのに対し、新しいHD700はエンターテインメントを指向している。ミッドバスをプッシュし、中高域から高域にかけてシャープさを演出した音は、音場の見通しがとてもいい。その反面、ウェットな表現はやや苦手で、スッキリとドライに聴かせる印象だった。
カナル型イヤフォンの「IE800」は、直前まで「IE10」と呼ばれていたモデルだが、発売に際してIE800へと名前が変更された(HD800のハイエンドイメージを引き継ぐためのとのこと)。セラミック加工の筐体(きょうたい)には、新開発の7ミリ径ダイナミック型ドライバーが組み合わされており、5Hzから46.5KHzというダイナミック型らしい広帯域再生を実現している。
2カ所に設けられている極小のステンレス製の空気ポートにより、スムーズなエアフローと低域再生能力の強化を図った。このため、バランスド・アーマチュアドライバーを用いた完全密閉型に比べると遮音性は若干落ちる(ただし、周りに気を使うほどの音漏れがあるわけではない)。また、伸びやかで自然な音場感が感じられるのは、こうした設計のおかげだろう。
ミッドバスがややプッシュ気味だが、ダイナミック型らしくローエンドは自然の伸びており、中高域から高域にかけても恣意(しい)的な長調はない。その割には細やかな情報もよく捉えており、バランスドアーマチュアほどではないにしろ繊細な表現力も併せ持つ。HD800のような純粋さはないが、HD700ほどのエンターテインメント指向でもない。
バランスドアーマチュアの音が苦手という人には、ダイナミック型には数少ないハイエンド機として良い製品に仕上がってきそうな印象だ。価格は599ユーロで今年夏の発売となる。
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