4K/8Kに注目が集まるも様子見ムード? ケーブル技術ショー
4K対応STBや4K/60pを15Mbpsに圧縮する技術が登場。しかし、2014年の4K試験放送、2016年の8K試験放送というロードマップをCATV局はどうとらえているのか。
CATV局向けに最新のケーブル技術を紹介する展示会「ケーブル技術ショー2013」が7月30日と31日の両日、東京・有楽町にある「東京国際フォーラム」で開催された。今回はスーパーハイビジョンの伝送技術や“4K対応STB”が注目を集める一方、具体的な4K/8Kのサービスにはつながりにくい空気も感じられた。
会場の入口近くに設置された「テーマゾーン」では、日本放送協会(NHK)が2016年の実用化試験放送の実現に向けて検討を進めている「8K・スーパーハイビジョンのケーブル伝送技術」を紹介している。基本的には2011年の“技研公開”で展示したシステムと同一で、256QAMと64QAMで変調した2つの搬送波を用い、95Mbpsの8K映像を分割伝送。シャープと共同開発した8K対応液晶ディスプレイに表示していた。
伝送信号はMPEG-2 TS(トランスポート・ストリーム)で、映像符号化方式はMPEG-4 AVC/H.264。2016年の8K実用化試験放送の手段として有力視されている高度BSデジタル放送を受信し、CATV網に再送信することを想定したシステムだ。
4K/60pをわずか15Mbpsに圧縮する技術
一方、最新の技術トレンドといえる「HEVC」(High Efficiency Video Coding、H.265)については、KDDIブースで最新の研究成果を見ることができた。同社は今年2月、J:COMと共同でフルHD、4K、8Kを同時に伝送する“階層符号化方式”を開発し、既存CATVインフラ(DOCSIS 3.0のIP網)を使った伝送実験を行っており、今回も2月の発表会と同じシステムを展示している(→関連記事)。
その片隅で、新しいHEVCエンコーダーによるデモ映像を見ることができた。4Kディスプレイの画面右上には、「4K 60p」(毎秒60フレーム)ながら「15Mbps」と“地デジ以下”に抑えられたビットレート。30pなら10Mbps前後になるという。
同社によると、今回の展示は256QAM、DOCSIS 3.0によるIP伝送を想定したもの。「パイプ(伝送路)としては30Mbps程度のスループットがあり、4K/60pで2番組を同時に伝送できる。回線効率を最大化するために開発した」。データ量を削減できた理由については、「人間の視覚的にみて重要度の低い場所の情報量を削減している」という。なお、現時点ではエンコードをリアルタイムで行うことはできないが、年内をメドにリアルタイムエンコード可能なソフトウェアエンコーダーを開発する方針だ。
4Kのセットトップボックスも登場
CATV STB(セットトップボックス)メーカーのパイオニアやヒューマックスは、4K対応をうたうSTBを参考展示した。もちろん、現時点では評価用ボードを机の裏に隠した“ほぼモックアップ”の状態で、製品化のロードマップも描けてはいない。それでも「来場者の関心は非常に高い」(パイオニア)という。
ただし、関心は高くても来場者(=CATV局)の反応はまちまちだ。「4Kの2年後には8Kの実用化試験放送が予定されている。市場がどちらを求めるか、判断しかねている」(パイオニア)。
また番組制作システムやカムコーダーがずらりと並ぶソニーブースには、4K対応カメラの姿がなかった。理由を尋ねると、「4Kと8Kに関しては、どちらに注目していいか分からない、あるいは4Kはやらずに8Kにいく、といった話も聞く。それより、現在はIPリモートコントローラーやIP伝送中継システムなど、現在の制作システムを効率化する製品の方がニーズは高い」(ソニー)。そして5GHz帯無線を使った4K中継システムを展示した富士通も、「注目度は高いが、具体的な商談には至っていない」と話している。
6月の「次世代放送推進フォーラム」(NexTV-F)設立発表会では、2014年に衛星あるいは通信を活用した4Kの実用化試験放送、2016年に8Kの試験放送というロードマップを示したが、普及促進より、まずは研究開発で先行して国際競争力を高める“成長戦略”という意味合いが強い。CATV事業者にとっても4K/8Kはユーザー獲得やサービス高度化のチャンスであると同時に、二重投資の危険をはらむ。状況の変化を見極めようとする姿勢は、むしろ当然といえるだろう。
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