4Kテレビ、ホントのところ:本田雅一のTV Style(2/2 ページ)
4Kテレビについて尋ねられるとき、必ず聞かれるのが「本当に必要なのでしょうか?」という質問だ。しかし、必要か、必要でないかという視点は、実のところあまり適切ではないと思う。
プレミアム映像を楽しむなら現時点でも有益
筆者が、引っ越しなどで新しいテレビを買うという友人に4Kテレビ購入の相談されると、次のような質問を返すようにしている。
「Blu-ray DiscやBS有料放送など、プレミアムコンテンツを少しでも高画質に届けようとしているメディアを観る機会や、それに対する価値観は?」
前述したように映像制作の面で4Kの導入が先行しているのは映画である。過去数十年の映像トレンドを振り返ってみると、映画という大きな予算をかけ、有料で観てもらわねばならないコンテンツを起点に、新たな映像技術のトレンドが発生している。
例えばサラウンド技術がそうだし、3D映像技術もテレビのためではなく、劇場向けコンテンツの3D化が進む中で、それを家庭でも楽しめるようにという趣旨で開発が進んだものだ。テレビ放送に新たな規格を加え、それが世界中に拡がっていく速度は遅い。ハイビジョンなど、アナログ時代も含めると最初の技術展示から30年以上を経てやっと普及したぐらいだ。
4Kに関しても、大判フィルムを用いた名作映画のレストアと4Kマスタリング、あるいは直近の映画における4Kデジタルシネマカメラを用いた撮影で、映画をはじめとするプレミアムコンテンツの画質がグッと上がってきていることが背景としてある。
現時点で4K放送はもちろん、4KのBlu-ray Discさえ存在していないが、従来の2Kマスタリングでは、撮影時やデジタル化の時点でそぎ落とされていた情報がマスターに存在するため、同じフルHDのBlu-ray Discでも従来より多くの映像情報が詰め込めるようになってきている。
一部、YouTubeなどで4Kのネット動画を楽しめるようになっているが、それらと比べても昨今の高画質BDは、とりわけ良い画質を獲得している。これは難しくいうと、デジタルフィルターの特性と組み合わせの違いによるもの。このあたりを、なんとなシンプルに高画質を愉しんでもらおうというのが、ソニーの「Mastered in 4K」である。
この取り組みは結果を見る限りはうまく行っており、BDというフルHDしか供給できないメディアを通じて、4Kの良さを感じることができるはずだ。「プレミアム映像を楽しむ手段としての4Kは有効だ」と強調しておきたい。
しかし、一般的なテレビ放送に対する4K化の効果は? となれば、状況は違ってくる。4K放送が存在せず、フルHD用カメラでコンテンツが作られている現在、それなりに精細”感”の演出はできるものの、そこに大きな価値があるかといえば疑問符が付くだろう。
その人が、どのようなコンテンツを楽しむか。これよって、4Kの価値は大きく異なるのだ。
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