出力を高めることでたくましいサウンドを奏でる小さな巨人――「NANO-A1」:潮晴男の「旬感オーディオ」(2/2 ページ)
年末に掲載した「NANOCOMPO」(ナノコンポ)の追加リポートをお送りしよう。今回はパワーアンプとして登場した「NANO-A1」。視聴タイトルは、今井美樹「ダイアローグ」から、このシーズンにぴったりの「卒業写真」だ。
今井美樹がカバーした「卒業写真」
今井美樹「Dialogue -Miki Imai Sings Yuming Classics-」はユニバーサルミュージック合同会社(レーベルはEMI Records Japan)から販売中。価格は3150円
試聴には今井美樹が英国のロンドンでレコーディングしたCD、「ダイアローグ」からTr.1に収録されているこのシーズンにぴったりの「卒業写真」を選んでみた。このアルバムは全編ユーミンの曲をカバーした構成だが、彼女ならではの優しい語り口がとても素直に耳に飛び込んでくる作品である。英国人のアレンジャーを起用している割には少し歌謡曲風味の楽曲もあるが、これはこれで十分に楽しめると思う。
最初に標準的なステレオ仕様で聴いてみた。ボーカルの伸びやかさが印象的だが、なんといってもベースラインのたくましさに驚かされる。プリメインアンプの「NANO-UA1」で、もう少し力強さがほしいと感じた部分がなくなっているだけでなく、音に躍動感がありブラインドで聴けば誰もこんな小さなアンプを使っているとは思わない。
今回は「NANO-CD1」のデジタル出力を96kHzモードにセットしている。プリメインアンプの「NANO-UA1」と組み合わせた時は少し音が優しくなるように感じたが、ここではそうはならず、声のリアリティーが増し、響きがきれいになる。電源投入直後は少しほぐれない感じだが、2時間程度通電した後だと雑味が減り一層まろやかさが高まる。デジタルアンプなのにこれは面白い変化だ。エコな使い方ではないが、良い音のためにはこれくらいの配慮があってもいいだろう。読者からはお叱りを受けそうだが、そうした傾向をつかんでから、ぼくはほとんど電源を落としていない。
次に「NANO-A1」をぜいたくにも2台使いし、モノーラル仕様で聴いてみた。スペック上の音響出力は変わらないが、先ほども触れたように電源事情の改善と完全にLチャンネルとRチャンネルが独立するためクロストークが減る。結果ボーカルのフォーカス感が高まりセンターに収束するし、音場が立体的になる。また静けさが増すことで余韻がより細やかに描き出される。全体にステレオ使いの時より上品というか上質な感じが聴きとれるようになる。やや変則的な使い方だが、これはこれでありだと思った。残念ながら「LS-50」は同軸型のスピーカーなので、入力端子が1つしかないためバイアンプモードを試すことは出来なかったが、こうした傾向からステレオ使いより間違いなくスピーカーの能力を引き出してくれると思った。
読者のみんなにはやっちゃいけないよ、といいながらナノコンポを見ているとその可愛らしさからどうしても“重ね置き”したくなる。実際、今回もパワーアンプを重ね、CDプレーヤーとDACを2段重ねした。いずれのモデルもアルミダイキャストの強固なシャーシをまとっているので、こうした使い方をしても特に問題は見当たらない。
またどの製品も電源は別体になったACアダプター方式だが、DC-INの端子はモデルによって形状が異なり誤配線しないように工夫されている。細かいことだがこんなところにもさりげない配慮が伺える。もっとも電源のアダプタが後ろにずらりとぶら下がるとちょっと煩い。ぜひともナノコンポと同サイズの強化電源をリリースして総ての機器へここから電源を供給するといった方法を考えても良い時期に来ているんじゃあありませんかね。次なる新製品への期待とともにこうしたアプローチにも挑戦してほしいものです。
ナノコンポは、時代性を反映して「小さいことは良いことだ」を体現させてくれる製品である。小さくても物作りの魂さえ失わなければ、こんな音をスピーカーから引き出してくれる。「NANO-A1」はそうしたオーディオの面白さを改めて体感させてくれる製品である。
関連キーワード
オーディオ | オラソニック | プリメインアンプ | DAC(D/A Converter) | ACアダプタ | 卒業 | 写真 | USB DAC(USB Digital-to-Analog Converter) | ヘッドフォンアンプ | ハイレゾリューション | 松任谷由実
関連記事
- “ナノコンポ”で聴くオーディオのスモールワールド
大型のオーディオシステムを置くスペースはないし、ミニコンポでは満足できそうもない。そんな人に注目してほしいのが、東和電子の「NANOCOMPO」(ナノコンポ)である。 - 「CDと同じ使い勝手を目指した」――ナノコンポ初のネットワークプレーヤー「NANO-NP1」
東和電子は、「NANOCOMPO」(ナノコンポ)シリーズの第5弾となるネットワークオーディオプレーヤー「NANO-NP1」を3月中旬に発売する。同時に提供する「ナノコントローラー」(仮称)は、とにかくシンプルな操作を目指したアプリだ。 - 「ハイエンドの音がする」、オラソニック“NANOCOMPO”にアンプ上位モデル「NANO-A1」
東和電子は、バイアンプやモノラルでの使用も可能なステレオアンプ「NANO-A1」を11月下旬に発売する。また、全ラインアップに新色「シルキーブラック」を追加。 - アキュフェーズの40年を詰め込んだ純A級アンプ「E-600」
「E-600」は、アキュフェーズが創立40周年を記念して、昨年11月に送り出したプリメインアンプの最上位モデルである。設立時の理念を頑なに守り続けている同社だが、このモデルは若い世代のオーディオ・ファンにも手を差し伸べる。 - AVアンプに新風を吹き込むか? NuForceの3製品を試す
米国のベンチャーがAV機器に新風を吹き込もうとしている。米NuForceから登場したAVプリアンプ「AVP-18」、マルチチャンネル・プリアンプ「MCP-18」、そしてパワーアンプの「MCA-20」を一気にチェックした。 - 大きくなったニンジンは“好き嫌い”のない素直な音――Carot One「ERNESTOLONE」
「Carot One」(キャロットワン)ブランドの小型プリメインアンプ「ERNESTOLONE」(エルネストローネ)は、前作より一回り大きな筐体にUSB-DACを内蔵したハイレゾ対応機。その実力は?
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.