ハードルを下げる4K対応IP-VOD――アクトビラが12月に開始
アクトビラが4K対応のIP VODサービスを12月に開始する。大容量の4K映像をオープンなインターネット環境で提供するため、いくつかの技術的な特徴を持たせた。
アクトビラは6月25日、4K対応のIP VODサービスを12月に開始すると発表した。同日開催した事業方針説明会で同社の香西卓社長が明らかにした。
2013年度は売上高、利益ともに過去最高を記録し、2年連続の黒字を達成したアクトビラ。2014年は「新たな成長に向けて踏み出す年」と位置づけ、事業範囲の拡大と新しいプラットフォームの構築を目指す。「次世代プラットフォームの構築における“1つめの矢”が4K IP-VOD。アクトビラは常に技術革新を怠らない」(香西氏)。
アクトビラの4K VODは、現在の「アクトビラビデオ・フル」と同様のISPフリー、かつ市販のテレビやレコーダーで利用できるのが特徴だ。もちろん4Kテレビ側が対応していることが条件になるが、テレビメーカー各社と協議して仕様を検討し、9月末を目標に「アクトビラ ビデオ・4K」仕様(仮称)をまとめる方針。「対応テレビの登場はメーカーの商品企画次第だが、われわれは12月に“レディー状態”にする。できるだけ多くのメーカーに対応してもらいたい」。
もう1つの大きな特徴が、HEVC/H.265エンコードにVBR(バリアブルビットレート)を採用すること。「VBRでは、動きの激しいシーンなどに多くの情報量を割り合て、逆に動きの少ない部分はCBR(固定ビットレート)よりも効率的。画質向上と平均ビットレオートの引き下げという2つの効果が見込める」(同社CTOの森大輔氏)。
ただし、オープンなインターネットを利用する以上、帯域幅の制約は常について回る。そこで同社は、平均30Mbps(ピーク時40Mbps)を基本として、平均15Mbps(ピーク時30Mbps)など複数のコンテンツデータを持ち、回線速度に応じてMPEG-DASH(Dynamic Adaptive Streaming over HTTP)準拠のアダプティブビットレート技術で動的に送出するデータを切り替える仕組みだ。
「例えば、集合住宅の回線などでは、夕方になって利用する人が増えると通信速度が落ちることがある。そうした“帯域の時間変化”に応じ、ストリーミング再生中でも送出データを切り替え、問題なく視聴し続けられるようにする」(森氏)。
より帯域幅の狭い環境に向けては、ダウンロード配信を提供する。ダウンロードには時間がかかってもテレビ側のローカルストレージに落としてしまえば回線速度とは関係なく4Kコンテンツを再生できる。このため推奨回線速度は「12Mbps」まで引き下げることが可能になった。ストレージとしては、Blu-ray Discレコーダーの内蔵HDD(レコーダーがアクトビラ ビデオ・4K仕様に対応する場合)やテレビの外付けHDDなどを想定している。
今回の発表では4K IP-VODに提供されるコンテンツや視聴料金などの詳細は語られなかったものの、「NexTV-F経由で放送局制作のコンテンツ活用は考えられる。また、(アクトビラのパートナーである)70数社のコンテンツプロバイダーと直接話をして増やしていきたい」と話している。詳細は、サービスの開始前に改めてアナウンスする予定だ。
「オープンなインターネットで、あまねく広く4K VODが利用できるようにする。出口が増えれば、コンテンツの供給も増えるだろう。オープンマインドで“市場を大きくする”ことを最優先に考えたい」(香西氏)。
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