シャープの新型4Kテレビ「LC-60UD20」で再確認した高精細映像の魅力:山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(2/2 ページ)
今月は6月下旬から店頭に並び始めたシャープの4Kテレビ「UD20」シリーズをとりあげたい。LEDバックライトを画面上下に配置したエッジ式ではあるが、素性の良い映画BDでは切れ味鋭い高解像度映像が楽しめる。
「LIFE!/ライフ」で切れ味鋭い超高解像度映像を確認
では、UD20シリーズの画質面の特筆すべきポイントを見ていこう。LC-60UD20の画質をチェックして、4K/60pコンテンツの高精細なハイフォーカス映像とともによいと思ったのが、リッチな色再現だった。まだ4Kパネルにはシャープお得意の4原色タイプは存在せず、本機は通常のRGB3原色パネルではあるのだが、本機のLEDバックライトには新たな発光材料が採用され、それに最適化したカラーフィルターと色復元回路の開発により、色再現範囲を昨年の4Kテレビ「UD1シリーズ」よりも約12%拡張し、デジタルシネマの技術標準化DCIが定める色域をほぼカバーしたという。
本機には、映画観賞用映像モードとして「映画」と「映画THX 」の2つがある。前者は、シャープが独自設計した暗室環境で観るにふさわしい映画画質。後者は、ルーカスフィルムから派生した高級AV機器の認証化団体であるTHXが定めたモニター画質に準拠したものだ(つまりUD20シリーズは厳格に定められた「THX 4Kディスプレイ規格」の認証を得ているということになる)。
「映画THX」の色域設定は、DCIよりも狭いハイビジョン規格の「BT.709」色域にピッタリ合わせられているが、「映画」は、本機の色域改善が大きくフィーチャーされた画質モードになっている。同社開発陣に話を聞くと、この「映画」モード時には、彩度の低い部分ではほぼ「BT.709」相当の色域に抑え、彩度(サチュレーション・レベル)が70%を超えたあたりのエリアでぐっと色域を広げるという手法を採っているという。すなわち全体に不自然な色にならないように留意しながら色合いの豊かさを実現しているわけだ。
また「映画THX」のモニター画質に比べて「映画」のほうが、個人的にはホワイトバランス、スキントーンともにより好ましく感じられる。「映画THX」の色温度設定はD65で、「映画」は6500ケルビンを基準にしながら、D65特有の緑が強く出るホワイトバランスを是正するように色温度設定されているようだ。このへんの画質チューニングの上手さに4K AQUOSの成熟が感じられる。
本機に限らずUD20シリーズは、LEDバックライトを画面上下に配置したエッジライト方式。暗室環境での黒の再現性についていえば、直下型バックライトを採用したソニー「X9500Bシリーズ」や東芝「Z9Xシリーズ」の後塵を拝するのは事実だ。しかし、通常の100〜150 ルクス程度のリビングルーム照明下であれば、モスアイパネルの恩恵もあり、それら直下型バックライト・タイプに迫るコントラスト性能が実現されているといっていい。とくに白のヌケがきわめてよく、本機のハイフォーカスな画調をひときわ強く印象づけることに寄与している。この画調は、映像入力信号をピクセル単位で分割し解析、明るさの情報を再配置する新開発の「ピクセルディミング」技術が大きく貢献しているのだろう。
8月2日に発売される映画Blu-ray Disc「LIFE!/ライフ」を本機LC-60UD20でじっくりと観てみた。才人ベン・スティラーが監督・製作・主演を務めたこの作品、米国の歴史あるグラフ誌「LIFE」の写真管理部門ではたらく内気な中年男ウォルターが主人公。この伝統ある雑誌の休刊が決まり、最後の表紙写真が見つからないという大問題に直面したウォルターが、グリーンランド、アイスランド、アフガニスタンを旅してその写真を撮ったカメラマン、ショーン・オコンネル(ショーン・ペン)を探し出す物語だ。
「アナログ時代の終焉」を描いたこの作品、そんなことが関係しているのかどうか、本作はデジタルではなくコダックの35ミリフィルムで撮影されている。DIマスターフォーマットは2K(HD)とのことだが、LC-60UD20の「映画」モードで観ると、4Kワークフロー作品に違いないと思わせる切れ味鋭い超高解像度映像が楽しめる。
とくにウォルターがヒマラヤ山中でショーンを見つけ出すシーンなど、ちらつく雪やごつごつした岩肌の描写が精緻極まりなく、自分の視力が上がったかのような錯覚を抱かされた。ネイティヴ4Kコンテンツでなくとも、よく出来た映画BDであれば4Kテレビの高精細な映像の魅力が堪能できることを改めて実感させられた次第だ。
各社から登場したこの夏の4Kテレビは、ほんとうに力作ぞろい。ひと頃の迷いからふっきれたような内容の製品が各社から登場して心強いかぎりだ。これから自分が何を楽しみたいか、テレビに何を求めるのか、そんなことをじっくり考えて後悔しない製品選びをしていただきたいと思う。
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