使いこなせてますか?――樫尾俊雄発明記念館で知った電卓にまつわるトリビアのあれこれ:「電卓の日」を前に電卓を知る(後編)(3/3 ページ)
東京理科大学・近代科学資料館では、計算をする道具(電卓)が現在の形になるまでをたどってみた。場所を移して、樫尾俊雄発明記念館では、電卓の“今”について理解を深めてみよう。
地域に合わせてローカライズされた電卓たち
カシオの電卓は国内だけでなく、海外でも販売されており、好評だという。その理由は、地元の声を反映した「ローカライズ版電卓」を開発・販売しているから。
その一例が下の動画に上げたインド向けと中国向け電卓だ。インドでは日本や欧米と桁の区切りが異なっており(日本も実際には万を超えた後3桁ごとに位の名前が変わるので欧米とは違うのだが)、最初の3桁の次が2桁ごとに区切られる。そのため「カンマ」の位置が小さい位から順に「3桁」「2桁」「2桁」「2桁」……と打たれているのだ。それ以外にも特別な機能が備わってるのだが――それは動画をご覧いただきたい。
どこを押しても大丈夫
ところで、電卓の中でサイズの違うキーがあることをご存じだろうか。そう、「+」キーはよく使うだけに大きくなっている。決してスペース的に余ったから、というわけではないのだ。かえって大きくすると問題が生じてしまう。それは「押した場所によって反応しない場所が出てきてしまう」というものだ。
カシオ計算機の本格実務電卓ではその課題を解決するために、「+」キーだけほかとは違う構造を取り入れている。下の写真に示すように「ハング」と呼ばれる金属のサポートを入れ、どんなに端っこ(隅ではない)を押したとしてもキーが垂直に下がるように工夫されているのだ。
「イライラするっ!」と言わせない工夫も
静かに考え事をしたいのに、壊れるのではないかと思うほどカチャカチャと音を立ててキーボードを叩かれてイライラした経験はないだろうか? ひっきりなしに電卓を叩いている部署のそばにいる人のことさえ気遣う工夫がされているという。それが「サイレントタッチキー」と呼ばれる設計だ。
ものによっては長期間使用していると、キーと本体の摩擦により生じた粉体が電子基板とキーの間に入り込んでしまい、いくらキーを押しても反応しない、ということが……。本格実務電卓では、そのようなイライラを感じさせないよう設計にもこだわっているという。
今回の「電卓を知るツアー」に参加するまでは、正直言って「電卓なんて安物でいいじゃん」と考えていた。そのため、なぜ電卓競技大会に出場する人たちが1万円以上するものを購入するのか理解できなかった。
だが、その考えを改めた。“電卓はいいものを使おう”。少なくとも、毎日ガンガン計算する人には“本格的”な“高い”“良い”電卓を使ってほしい。経理部門に配属される友人がいたら、迷うことなく「いい電卓」をプレゼントしたい。電卓にはそれだけの価値がある。――それを知ることができただけでも、わたしにとっては価値ある「ツアー」だったと思う。
樫尾俊雄発明記念館ならではの「動くリレー式計算機14-A」
現在世の中に出回っている電卓の「原型」となったカシオ「リレー式計算機14-A」。前回のリポートでは動く様子を紹介できなかったので、ここでどのように動くのか見てもらおう。
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