「アイリスオーヤマ」が年間1000点もの新商品を生み出せる理由:角田工場探訪記(2/2 ページ)
LED照明を中心に多様な商品を扱うアイリスオーヤマ。同社の中核工場「角田I.T.P.」では、スピード感を持って商品を市場に投入するため、さまざまな試みをしている。
製造と物流が一体化したメーカー・ベンダー制で無駄を排除
アイリスオーヤマは、企画・製造のメーカー部分と物流のベンダー部分が一体になっているため、流通コストを削減できるのも特徴的だ。工場内で在庫を管理しており、配送トラックも直接工場にやってくるため、多品種・小ロットの商品を無駄なく配送できるほか、配送先の小売店からの情報がダイレクトに入ってくる。
家電製品のほとんどは中国の大連工場で製造しているため、角田I.T.Pで見学できたのは収納ケースなどのプラスチック用品の製造のみ。在庫を減らすために工場内には多数の「金型」が並んでおり、必要なときは販売場所の近くにある工場に金型を輸送し、現地で製造することで流通コストを削減している。ほとんどの製造機器が溶かした樹脂を流し込んでプレスする射出成形だったが、中には古い油圧式のものも残っていた。
自動倉庫では、11台のロボットが自動で商品を運び出す。角田I.T.Pだけでも2万6000パレットの商品が管理されており、東日本大震災のときは自動倉庫の復旧を第一優先で行ったということだ。
物流倉庫では、配送エリア別にトラックを停車できるスペースがあり、1日200台ものトラックが商品を運搬する。先述したようにアイリスオーヤマは物流部分も自社でまかなっているため、ここから全国の小売店に商品が配送されていく。
社内の評価試験で品質管理を徹底
さまざまな商品を扱うアイリスオーヤマは、各商品の評価試験を自社で実施し、品質管理を徹底している。家電関連では、自動で充放電を繰り返す機器でバッテリーテストをしたり、評価機器内の温度や湿度を調整して季節家電の耐久性をテストしたり、機器内で太陽光や雨を再現して家電の塗装が剥げないかどうかを試したりしていた。また、家電を扱うようになってからは振動試験器で梱包(こんぽう)によるダメージをテストするようになった。ホームセンターなど小売店への輸送時に不具合がないかを確認するため、さまざまな角度から梱包した商品を落下させる試験も実施している。
応用研究部では、空気清浄機の消臭・脱臭性能や掃除機の吸引性能、電子機器のノイズなど幅広い試験を行い、製品開発に活かしている。面白いところでは、ノンフライ調理器で調理したり、温め直したりした揚げ物の衣のサクサク感なども計測するという。
応用研究部は新商品の開発も担っており、担当者は「特にLED照明の高効率化に注力し、1ワット当たり何ルーメン出せるかを意識している」と語る。これまでは家庭用シーリングライトや、オフィス用の直管LEDなどを展開していたが、今後は玄関、浴室などで使うダウンライトなどを強化していく方針だという。
仙台駅からクルマで1時間という立地にもかかわらず、角田I.T.Pには約900人の社員(配属予定の新卒社員を除く)が生き生きと働いている。面積の限られた東京や大阪のオフィスではなかなかできない試みとして、社員の自席を2つ用意しているのもユニークだ。通常のデスクにはPCを設置せず、PCを使うときは「PC島(パソコンじま)」と呼ばれる専用デスクに移動する。ずっとPCを使っていると頭が凝り固まるという考えから、PCの使用を1回45分に制限し、時間が過ぎたらいったんPCのない自席に戻るのだという。そのほか、会社の敷地内にテニスコートを所有するなど、部活動の動きも活発だ。売上を堅調に伸ばすアイリスオーヤマは、まだ肌寒さの残る宮城で熱い毎日を過ごしている。
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