“風の中津川”で生み出された“静かな扇風機”――三菱「SEASONS」:滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(2/2 ページ)
三菱電機が14年ぶりに扇風機の新製品を発表した。その開発設計に携わったのが、同社内でさまざまな風製品の開発に関わり、“風の中津川”の異名を持つ中津川製作所。風の本質を知り尽くす製作所が見つめ直したDC扇風機「SEASONS」のスゴいところとは?
「ウイングレット形状は、弊社換気扇の羽根『ダブリュキューブファン』にも採用されているこだわりの技術です。羽根の外周部を滑らかに湾曲させることで、圧力の高い風下側から圧力の低い風上側への風の流れを制御し、渦の変動を抑える独自技術で、家電以外の分野では、例えば、航空機の翼などにも採用されています」。
このような先進の気流制御技術に加え、トレンドであるDCモーターを採用したことで、圧倒的な静音性がウリの『SEASONS』。きめ細かな風量5段階切替や滑らかに変化する“リズム風”も実現した。
「一番風量の強い“強”運転時でも、30dBという“ささやき声”並みの低騒音化を実現しています。また就寝時やリラックスタイムのための微風は、屋外で木の葉がふれあう程度といわれる20dBより、さらに静かな約12dB。生活音のあるリビングなどではもちろん、仮に深夜の寝室で動かしたとしても、ほとんど人がその音を聞き分けるのは難しいでしょう」。
とはいえ、風がいくら静かでも単に風力が弱かったら意味がない。風の本質を見極める同製作所だからこそ、微風であってもエネルギーロスが少なく、いかに遠くまで風を届かせるかを追求した結果、扇風機の羽根をカバーする“ファンガード”の形状を突き詰めた。
「この『ロング気流ファンガード』は、風の拡散を抑制し、エネルギーを効率化するために、フロントカバーのラウンドパターンを羽根の回転方向とはあえて逆方向に湾曲化しました。より静かで到達距離の長い気流を作ることで、室内のスムーズな空気循環を実現しています」。
最大10メートルという“ロング気流”により、「SEASONS」はサーキュレーターとしても高いパフォーマンスを発揮する。首振りも上下と左右の動きを立体的に組み合わせることが可能だ。
「上下左右の動きで、ウェーブしながら首を振ります。室内の空気の撹拌(かくはん)はもちろん、洗濯物の室内干し時にもおすすめです。左右の首振り角度は50度/90度/180度の3段階で、とくに180度はかなりワイドです。上下方向の首振りも50度、100度の2段階があり、真上方向にも風を送ることができます。これは冷暖房の空気循環などにも効果的です。また、中間ポールを外せばロースタイル仕様に。置き場所や用途も広がります」。
取材後、実際に筆者宅に「SEASONS」を設置して試したところ、風の快適さはもちろん、静音性の高さに驚かされた。“強”運転にすると、どの扇風機もなんとなく音が気になるものだが、「SEASONS」はそういった不快な感じが一切しなかった。これは寝室などで使う際に大きなメリットだろう。また、立体的な首振り機構は、梅雨時などに、部屋干しを余儀なくされる人にとっては頼もしい味方になりそうだ。
このように扇風機にとってなにより重要な風を生み出すため、国内屈指の換気扇技術などをベースに、風を知り尽くした中津川製作所が開発した「SEASONS」。その時の流れをも感じられる心地良い風を、ぜひ一度体感してほしい。
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