90年の歴史に裏付けられた最新の“ラックス”――ラックスマン「L-590AXII」を聴く:潮晴男の「旬感オーディオ」(2/2 ページ)
1925年に大誕生したラックスマン。ブランドとしてのラックスはその翌年に生まれたが、社名になったのは1961年のことだ。だから今でもぼくの周りにいるオーディオマニアくん達はラックスマンでなく“ラックス”と呼ぶ。
マーク IIへの進化は、ICで構成されていたプリアンプ部をディスクリート化し、アッテネーターのバッファーアンプを改良してダイナミックレンジとS/Nをアップした。電源トランスの向きを変えてまで電解コンデンサーを8基並べて容量を倍増し、A級動作のパワーブロックのドライブ能力を高めていることも特徴だ。このほかラックスマンのオリジナルとなる出力信号の歪(ひずみ)成分だけをフィードバックする負帰還回路により高域の歪の低減もおこなっている。また前作ではいささかお飾りに甘んじていたメーターも実用性を兼ね備えたVU計としての動きを持たせたことも新しい。
温かみのあるサウンドに筋肉質な部分をプラス
ケルティック・ウーマンのCDアルバム「エメラルド・ミュージック・ジェムズ」から「ユー・レイズ・ミー・アップ」を聴いてみる。表現力の豊かな収録がなされた作品だが、「L-590AXII」はスーザン・マクファーデン、リサ・ラム、クロエ・アグニューという声質の違う3人の澄んだボーカルを丁寧に描きだす。ハーモニーもとてもきれいだ。アンプ全体のSN感が上がって細かい音の情報をしっかり捉えることができた成果といってもいいだろう。スピーカーとスピーカーの間の音の密度も濃いし収束感も高い。マレード・ネスビットのフィドルの音色もきりっとしていてフレッシュである。
前作の「L-590AX」を聴いた時にも感じたことだが、ラックス時代の温かみのあるサウンドに筋肉質な部分がプラスされ、音の質感表現が新たなステージに入ってきたことをうかがわせる。
「L-590AXII」は2005年にリリースされた「L-590A」から続く4世代目の成熟モデルだ。前述したように細部の変更により信号処理回路も設計し直しているので、価格は前作から5万円アップした。しかしながらこのサウンドをひとたび聴けば、そのパフォーマンスの向上に誰しも納得することと思う。このプリメインアンプの音には紛れもなくラックスマンの顔がある。しばしオーディオをお休みしていた人にはぜひとも体験してみていただきたい1台である。
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