米ドルビー、「Dolby AC-4」対応テレビの市場導入でサムスンと提携:デジタル放送が進化
ドルビーは、放送やインターネットストリーミングサービスへの採用が期待されている「Dolby AC-4」について、サムスンとの提携を発表した。サムスンは、2017年に「Dolby AC-4」対応テレビを市場投入する見込みだ。
米Dolby Laboratories, Incは4月18日、韓国Samsung Electronicsとの提携を発表した。ドルビーが開発した新しい音声フォーマット「Dolby AC-4」に対応するテレビをサムスンが2017年に投入する。
Dolby AC-4は、Dolby AC-3、Dolby Digital Plusに続く、ドルビーの新しいロッシー(非可逆圧縮)コーデック。互換性を廃して圧縮率を上げたのが特徴で、圧縮効率は現在の放送技術を最大50%上回る。この特徴を生かし、次世代のデジタル放送やインターネットストリーミングサービスへの採用が期待されている。
さらにDolby AC-4は、オブジェクトオーディオ(イマーシブオーディオ)のサポート、およびパーソナライゼーションといった特徴があり、臨場感の向上に加えて視聴者が自分好みの音場を設定できるといったメリットもある。例えばスポーツ中継で視聴者が、自分の応援するチームの観客席の声を大きくして、まるでその中にいるかのような雰囲気を楽しむといった使い方ができる。
「効率的な配信による高品位な視聴体験、多言語放送、視聴覚障害者向けサービスの提供など、放送業界が今なお、直面している課題への解決策を提供するとともに、放送からインターネットによるOTTサービスに至るまで、これまでにない新たな視聴体験のためのプラットフォームを提供できる」(ドルビー)
Dolby AC-4の中核要素は、ETSI(European Telecommunications Standards Institute:欧州電気通信標準化機構)の標準規格「TS 103 190」、およびデジタルビデオブロードキャスティング(DVB)の標準規格「TS 101 154」として規格化済み。また、米国のデジタル放送の仕様を規定するATSC(Advanced Television Systems Committee:高度化テレビジョンシステム委員会)の次世代デジタル放送規格「ATSC 3.0」において推奨項目として採用される見通しだ。
昨年7月には米Visioおよび米Sony Visual ProductsがAC-4へのコミットを発表するなど、ドルビーは着実にパートナーを増やしている。同社の放送事業部門担当シニアバイスプレジデント、ジャイルズ・ベーカー氏は、「SoCプロバイダーや業務用製品、サービスといった分野のパートナーも増えている。サムスンとの提携により、革新的で、より身近な没入型の放送オーディオ体験をより早く消費者に提供できるようになるだろう」とコメントしている。
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