一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A-PAB)は4月6日、東経110度CSを利用する“左旋円偏波”の4K試験放送に関する説明会を実施した。会場となったスカパーJSATの東京メディアセンターでは、衛星に向けて電波を送出する巨大なパラボラアンテナや対応チューナーの試作機、実際に受信した番組などが公開された。
左旋円偏波を使った日本初の試験放送。2018年12月にスタートするBSと110度CSによる4K/8K実用放送に向けて受信伝送システムの検証や受信機の開発、検証などを進めることが目的だ。一般ユーザー向けの受信機器はこの試験放送を活用して今後開発されることになっている。「新たな4K/8K放送の受信環境構築を後押ししたい」(A-PABの土屋専務理事)
ただし、左旋円偏波は新しい方式のため、視聴するためにはチューナー以外の受信設備を交換する必要があり、ハードルは高い(関連記事)。土屋氏は、左旋による4K/8K放送を「新たな歴史」と位置付け、1984年のNHK BS放送開始時を引き合いに出した。「BS放送は当初、1軒1軒の家庭にパラボラアンテナを取り付けるところから始まった。その後はCATV再送信などの追い風もあり、現在では4000万世帯がBSデジタル放送を視聴できる状態になっている」
しかし、A-PABが2016年末に実施したアンケート調査では、「現在の4Kテレビだけでは2018年の4K/8K実用放送が視聴できないことを知っている」人は全体のわずか6.5%。A-PABではまず、全国の電気店や工務店、マンション管理業協会などに向けたセミナーを実施するなど、周知活動を展開していく考えだ。「左旋円偏波も従来の設備が利用できず、まさに1から始める状態。受信機がどういう形になるのかも、まだ見えていない。課題は多々ある」(A-PAB)
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