日本の将来を守るために――知的財産マネジメントを学ぶ意義K.I.T.虎ノ門大学院 在校生インタビュー

特許権や著作権を扱う「知的財産」の分野は、年々重要性が高いものになっている。知的財産の知識を身につけたい、弁理士を目指したいと考える社会人が、法律+IT+実務&経営という三分野から学べるのが、K.I.T.虎ノ門大学院の知的創造システム専攻だ。

» 2009年10月01日 10時00分 公開
[PR/Business Media 誠]
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 日本の基盤は“ものづくり”だと言われることは多い。人件費が高い日本が今後、ものづくりを武器に世界で生き残るために重要になってくるのが、特許権や著作権といった知的財産(知財)である。

 企業において、知的財産(知財)のマネジメントを戦略的に進めることが重要であることは世界的に共通認識となっている。日本政府も、特許事務所や企業の知財部を始めとする知財専門人材を、2015年までに現在の約6万人から12万人に増やす計画を立てている。中でも知財の専門家であり、特許等の申請を独占的に行える弁理士は、合格率数パーセントの超難関国家試験をクリアする必要はあるが、志す人の多い人気の資格だ。

重要度を増す知的財産(知財)マネジメント

 現在、企業で知財関連の業務に携わる人は必要な知識をOJT(On-the-Job Training)で得ていることが多い。知財については広い視野と実践的な知識が求められているにもかかわらず、体系的に学べる場所はほとんどないのが実情だ。

 K.I.T.虎ノ門大学院の「知的創造システム専攻」には、「知的財産プロフェショナルコース」と「国際標準化戦略プロフェショナルコース」という2つのコースが用意されている。前者は知財専門人材の育成を目的にしたコース、後者は2009年度に新設されたコースで、近年重要視され始めた国際標準化の戦略やスキルを習得することが目的となっている。

 知的創造システム専攻のカリキュラムは、(1)知的財産法を中心とした法令科目、(2)産業の基盤技術であるITに絞り込んだ専門技術科目、(3)学んだ知識を実務や経営に生かすための実務・マネジメント科目の三位一体型の構成になっているのが大きな特徴だ。単に法律を勉強するだけではなく、技術や実践までマスターできるようにカリキュラムが組まれている。

 しかし、なぜITと知財なのだろうか。専攻主任である加藤浩一郎教授は「ITと知財は切っても切れない関係がある」からだと話す。

 「典型的なのがソフトウェアです。ソフトウェアはそれ自体コピーし放題の無体物で、著作権や特許という制度によって守られています。例えばオープンソースは著作権を無視していると思われるかもしれませんが、実は全く逆で、著作権制度を利用し、ライセンスによりうまくコントロールしています。IT機器やインターネット関係の技術なども特許だらけです。知財とITは関係性が深く、そのためこの専攻では技術テーマとしてはITをメインに扱っています」(加藤教授)

知財の習得は、リスク管理やビジネスチャンスにつながる

 知的創造システム専攻の2コースのうち、知的財産プロフェショナルコースでは、学生の8割近くが弁理士を目指している。特に、一定の科目を修了することにより弁理士の試験「短答式試験」の一部が免除される制度が2008年から始まり、K.I.T虎ノ門大学院がいち早くそれに対応したことで、弁理士志望者の注目度がさらに上がっている。

 しかし加藤教授は、「エンジニアやマネージャーなど、弁理士を目指す人以外も知財の知識を持つべき」と話す。「本来、知財の知識はエンジニアやマネジメントの方もしっかりと持つべきものです。例えば、米国で訴訟に負けると、200〜300億円という損害賠償金を取られることもある。大企業でも簡単に倒産してしまいますし、そういう例は本当にあるんです」

 これまでは、特許や知財管理は法律の専門家に任せるというイメージがあった。しかしこれからはリスク管理の意味からも、エンジニアやマネージャーも知財の基本的な知識、例えば、特許と著作権の違いやオープンソースの仕組みなどについては知っておくべきだろう。また、逆に戦略的に特許を管理することで、大きなビジネスチャンスにつながることもある。

 「特許や著作権のビジネスは非常に盛んになっています。代表的な例がIBMやキヤノンです。戦略的に特許を管理し、活用していくことによって、企業として大きく飛躍できる。知財の専門家を増やすことも重要ですが、一般のビジネスマンが知財を学ぶことにも、大きな意味があるのです」

「国際標準化」がなぜ重要なのか

 もう1つのコース、国際標準化戦略プロフェショナルコースでは、何を学べるのだろうか。そもそも「国際標準化」とは何か。

 「標準には、いわゆる“デファクトスタンダード(事実上の標準)”と“デジュールスタンダード(法律上の標準)”があります。デファクトスタンダードの典型例がWindows OSです。つまり誰が決めたわけでもなく、市場が決めた。これを戦略的に狙うのは難しいものがあります。一方、デジュールスタンダードは、例えばISOやITUなどの標準を決める国際機関が決めた規格です。現在は、国際標準が決められたら、それを優先的に採用しなくてはならないというルールになっています」(加藤教授)

 業界の標準になることによって、みんながそれを使うことになる。つまり、標準を取れるかどうかは、企業の死活問題なのだ。自社の製品や技術を標準にもっていくためにはどうしたらいいのか、国際機関に標準として認められるにはどうしたらいいかを学ぶのが「国際標準化戦略プロフェショナルコース」だ。

 そして、標準を狙うには特許が非常に重要な役割を果たしている。「特許戦略、場合によっては著作権戦略も重要です。その特許をどう処理するか、あるいは標準に持っていくために、どう特許をとっていけばいいか、などが重要になってきます。このように、知財の知識をベースに標準化の知識も習得できるようにしているのが、国際標準化戦略プロフェショナルコースなのです」(加藤教授)

 2つのコースは非常に近い関係にあり、知的財産プロフェッショナルという知財専門家の中の部分集合として国際標準化のプロフェッショナルがあると考えていい。「国際標準化のコースは弁理士志望者に限った内容ではないので、ぜひエンジニアやマネジメントの方にも来ていただきたい」(加藤教授)

 K.I.T.には、知的創造システム専攻の他に「ビジネスアーキテクト専攻」もあり、企業戦略やコンサルティングなどを合わせて学ぶこともできる。ITをベースに知財から国際標準、さらに経営戦略やマネジメントへと視野を広げていけるのも魅力だ。

キャリアチェンジ、キャリアアップを決心して大学院に

関根俊徳さん。K.I.T.虎ノ門大学院・知的財産プロフェショナルコースに在学中。弁理士資格を目指している

 知的財産プロフェショナルコースに在学中の関根俊徳さんは、三栄国際特許事務所に勤める32歳。30歳の頃キャリアチェンジを決心し、知財のことはほとんど知らない状態で、このコースに飛び込んできた。現在は大学院生活2年目で、弁理士を目指しながら修士論文に取り組んでいる。

 知財を学ぼうと思ったきっかけについて、関根さんはこう振り返る。

 「発端は大学の時にした世界一周の経験にあるのですが、そのときに日本の技術のすごさを改めて痛感し、それが、ものづくりの仕事に携わるきっかけとなりました。卒業後、建築、自動車エンジン製造、IT系システム制作とまったく畑が違うものづくりの現場で働いて、さまざまな技術に触れてきました。ちょうど30歳のとき、結婚を期に自分のこれまでを振り返りまして、出会ったある知財の本にあった、日本の知財のあり方と自分の考えとがぴったりとマッチしたんです。『日本の技術を守る仕事こそ、自分の集大成となる職』と考えるようになりました。これが知財を学ぼうと思ったきっかけですが、私はさらに欲張って、ITの知識をもっと身につけたいと考えていたので、ITについて本格的に学ぶことができるK.I.Tを選びました。」

 関根さんは入学当時すでに結婚していたので、仕事を辞めて大学院1本の生活になることは考えなかったという。「K.I.T.の先生に、家族を一番大切にしてください、家族を安心させるためにも早く弁理士になってください、といわれました。とても印象深かったですね」(関根さん)

東隆徳さん。K.I.T.虎ノ門大学院・国際標準化戦略プロフェショナルコースに在学中。知財を知った本の著者である丸島儀一氏から直接学べることにも感動したという

 一方、国際標準化戦略プロフェショナルコースに在学中の東隆徳さんも、法律についての知識は持たずに入学した。株式会社マーケティングセンターに勤める東さんは、現在28歳だ。

 「私はマーケティングリサーチの会社で、自動車業界のリサーチをしています。『キヤノン特許部隊』(丸島儀一著、光文社新書)を読んで、知財に興味を持ちました。大学院については、社会人になった後のどこかのタイミングで新たな専門分野を学びたいとおぼろげながら考えていました。一方で、自分の仕事を通して、これから今まで以上に海外の市場が重要になってくるはずだ、という思いがありました。今後、海外の市場をどうやって拡大しシェアを取っていくかということと、かつて読んだ『キヤノン特許部隊』の内容がぴったり合って学べるのが、このK.I.T.でした。国際標準化の知識が海外の市場の拡大とシェア獲得のために必ず必要になる、それを同時に学べるところがあるのだろうか、と考え始めたときに、国際標準化戦略プロフェショナルコースが日本で初めてK.I.T.に開設されて、このタイミングで行くのがベストだと思ったんです」(東さん)

 東さんは弁理士を目指しているわけではないが、知財や国際標準の知識が仕事の幅と深みを増すことにつながっているという。「社会人になってから、もう一度学び直したいという気持ちがあったので、実はMBA(Master of Business Administration、経営学修士)も考えたんです。でも仕事をする中で、『MBAではなくてMOT(Management of Technology、技術経営)の方がいいのかな』と判断しました。技術の知識を深めたい、日本の技術を世界に対して強くしていくためにはどういうことをしていかなければならないか、という思いが自分の気持ちの中で強くなり、それを深堀りして学びたかったのです」(東さん)

キツイけれど充実、楽しい毎日

 社会人大学院なので、入学すると平日の昼間は会社の仕事をこなし、夜と土曜日の全日に大学院の授業を受ける。仕事と勉強の両立はやはりかなり大変だ。

 「K.I.T.は1年で修了可能なカリキュラムになっているので、結構大変ですね。平日の3〜4日は仕事が終わってから学校に来て、22時くらいまでいます。住んでいる場所にもよると思いますが、帰宅は0時を過ぎることも多いです。これから後期が始まりますが、修士論文の準備もあるし授業もパンパンに入っているので、本当に大変です(笑)。でも、私の場合は幸い会社の方々に快くご協力いただくことができ、授業のあるときは早く上がらせてもらっています」(東さん)

 関根さんは現在2年目。後期の授業は取らず、修士論文に集中している。「こんな風に色々選択できるのが、K.I.T.のいいところだと思います。魅力的な授業がいっぱいありますので、余裕があれば本当は今も授業を取りたい。でも、卒業してからも聴講生として授業を聴けるので、それもまたメリットだと思っています」(関根さん)

 2人とも、大学院生活やカリキュラムには十分満足しているという。関根さんは院生の紹介で特許事務所に転職し、実際の業務もそこで経験して実績を積んでいる。弁理士を目指すのはファーストステップだという。「今は、単に弁理士資格を持っているだけでは食べていけない時代です。先生にも『十把一絡げの弁理士にはなるな』といわれます。しっかりした知識と実践力を持った本当のプロの弁理士を目指して、この大学院を出たことに恥じない弁理士になりたいですね」(関根さん)

 また、授業で鍛えられる中で、プレゼンテーション力がついてきたのはありがたいとも話す。「これからの弁理士はコミュニケーション能力も大切だろうと思っています。明細書のチェック・作成等については得意であったり、技術的なセンスが長けている人であっても、プレゼンの経験がない、人との交渉は苦手といった方には非常にいい場だと思いますね」(関根さん)。ちなみに、修士論文の題材としてIT系の研究をしている関根さんのテーマは、今流行のTwitter。「まだ修士論文のための調査をいろいろしている段階で、深みにハマっている最中です(笑)」

 東さんは授業を聞いていると楽しくて仕方がないという。「国際標準化を学ぶという点ではまだ歴史が浅いですが、これは一種の“外交”だと感じています。国も企業も、標準化を含めてものづくりをしていかなくては、今後は立ちゆかなくなるでしょう。また国際標準化の勉強は、それだけやればいいというものではなくて、国際標準化と知財との両方を分かっていないとバランスが悪い。これも授業を聞いていて感じることです。その意味でも、ここで知財を学びつつ、国際標準化もカバーし、実際に実務をやってこられたすばらしい教授陣の授業を聴けるのが本当に楽しい。授業は自分で本を読めば分かるという内容ではないです。そのことをやってきた当事者でしか分からない状況を本人から直接聞けます。それが非常に実践的で、すごく楽しいですね」(東さん)

 さらに関根さんは、人脈ネットワークも大学院の大きな魅力だと力説する。

 「大学院は人脈の宝庫、ネットワークの宝庫です。社会人は短い時間で集中して勉強するので、緊張感、集中力が格段に高い。また、さまざまな分野からモチベーションの高い人が集まってくるので、とても刺激的です。私自身も、法律関係とは全く異なる業界から知財業界に入った珍しいタイプですし。独学で勉強して弁理士の資格を目指す人は多いですが、このようなネットワークに飛び込むと、本当にいいことだらけです」(関根さん)

卒業後の展望は?

 卒業後に何をしたいかという質問に、2人とも色々な夢を語ってくれた。そこに共通するのは日本の技術力を強くしたい、守っていくために働きたいという熱い思いだ。

 「やっぱり海外に目を向けたいという思いがあります。日本の技術を守っていくためには、一度日本から出て、外から見る必要があるかなと思っています」(関根さん)

 「日本の技術は世界に対して強くなれる。その技術をもって起こる市場の変化を見ていきたいと思います。また、自動車業界のリサーチという仕事をしていますので、自動車の市場をもう一度盛り上げていくために何ができるかということに知恵を出して、お役に立ちたいと思っています」(東さん)


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提供:K.I.T.虎ノ門大学院
アイティメディア営業企画/制作:Business Media 誠 編集部/掲載内容有効期限:2009年10月14日