数字で見る、ドイツの強さと弱さ藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2011年02月14日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 EU(欧州連合)は脆弱(ぜいじゃく)なメンバーを抱えて四苦八苦しているが、そのリーダーの1つ、ドイツの2010年のGDP成長率は3.6%に達するのだという。G7(先進7カ国)の中ではおそらく日本に次いで高い数字になるはずだ。ドイツや日本が高いのは、前年の2009年にGDPが大きく落ち込んだことによる“バンジージャンプ効果”があるからだ。

 そこで英エコノミスト誌最新号(Vorsprung durch exports)では面白い分析を試みている(参照リンク)。ちなみにこのVorsprung durch exportsは、自動車メーカーアウディが1970年代から広告で使っている言葉「Vorsprung durch Technik」をもじったタイトルである。もともとの意味は「技術による前進」だが、それを「輸出による前進」としてドイツ経済の現状を表した。

ドイツのGDP成長率はG7で最も高い

 以下、同誌の分析の要旨を紹介する。G7各国のGDPを10年という単位で比較すると、ドイツの数字はたいしたことはない。過去10年の平均成長率は0.9%、米国の約半分にしかすぎないからだ。しかし米国のGDP成長率が高いことの1つの理由は、人口が1%弱ぐらいのペースで増えていることである。それに対してドイツの人口は減っている。人口という要因を排除するために、1人当たりGDP成長率で比較するとどうなるか。

 そうすると景色がかなり変わってくる。過去10年のドイツの1人当たりGDP成長率はG7でトップ。次いで英国、日本。米国は5位だ。1人当たりGDPでリーマンショックの大きさを測る(2007年第4四半期と2008年第4四半期の比較)と米国に比べてドイツの傷のほうが浅く、G7諸国で唯一2007年レベルにまで回復した国だ。

 ドイツの失業率は6.6%で米国(9.4%)よりも2.8ポイント低い。また公的あるいは個人の債務という点で見ると、バブルがなかったために、他の諸国よりははるかに健全だ。家計の可処分所得に占める債務の割合は、この10年間で115%から99%に低下した。英国はこの間、117%から170%に高まり、米国は100%から128%になった。GDP比で見た財政赤字の規模は7カ国中で最低だ(約4%)。このためIMF(国際通貨基金)はこれから5年間、ドイツの成長率がG7で最も高いと予測している。

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