料理で社会を変える!“平成の魯山人”の挑戦郷好文の“うふふ”マーケティング(1/2 ページ)

» 2012年08月30日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など。中小企業診断士。ブログ「cotoba


 「いいね!」を押させる記事の説得力、その数は常に1000以上、コメント数もハンパじゃない。Facebookをここまで巧みに使うところがすごい。しかもその内容が「ホンネ」なのである。

 ジャンクフードも大量生産食品にも危険なものがいっぱい入っている。知る人は知っていることだが、大手企業に遠慮なくここまでズバリと言い切る人はマレだ。誰がやってるのか? そこに“平成の魯山人”がいた(北大路魯山人:大正から昭和にかけての料理家、美食家)。

次々に放たれる食に関する直球記事

 「料理には社会を変える力があります!」とうたうジャパンローカルフード協会。協会は2011年6月1日にFacebook上で発足した。最近の記事を挙げてみよう。

 「夏は味噌漬け、もろみ漬け」では食欲が落ちる夏にはもろみ漬けがテーマ。肉でも魚でもトマトでも卵でも味噌床にひと晩漬けると塩味が食欲増進になる。「え!?減塩って意味ないの?」では減塩=健康は偏った知識と警鐘を鳴らす。誰でも減塩はかえって健康を害する。

 「子どもの知能を低下させるジャンクフード」では、3歳までの幼児にジャンクフードを与えるとIQが下がる英国の実証研究を取りあげる。「遺伝子組み換えワースト1は明治のカールなど」では、遺伝子組み換え原料を使う企業と、日本の行政の規制がゆるいという話題。読むと恐くなる。

松田正明さん 松田正明さん

 食に関する直球記事が次々に放たれる。それは「1人」の書き手から。その人は生まれつき重度の心臓疾患があった。彼の祖母は「料理には命を繋ぐ力があるんやで」と諦めず、冷製茶碗蒸しを作ってくれた。そうして彼は生き延びた。そのテーマの「命を繋いでくれた冷製茶碗蒸し」には2500もの「いいね!」が寄せられた。

 松田正明さん。協会の代表だけでなく大学講師、システム開発者、アーティスト、料理家、事業家……いくつもの顔を持ってきた。あの「食べるラー油」でも桃屋の同種品の発売に先駆けて売り出した。石垣島のラー油とも違う味覚でマーケティングを展開した。

 Facebookで「シェア」を引き出すのは何か。それは誰もがもつ感情の機微を突くこと。食への感謝の気持ちだけでなく、現代の食があぶないという恐怖、だから正しいもの、良いものを食べたいという欲求。記事にはそんな感情ボタンをが埋め込まれている。

 「食べたい」を「作りたい」へ、さらに「正しく生きたい」支援に転換するのが、平成の魯山人のすごみである。

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