娘: それはうすうす感じていたんだよね。部活でも授業でも、褒められるとうれしくなって、周りの人をもっと喜ばせようって、ついがんばっちゃうんだ。
父: それ自体は、良いことだよ。程度問題であるというだけで。
娘: 友達との関係でも似たことがあって、不登校の子が学年にいるんだけど、あんまり友達がいないみたいだったの。だから、その子に喜んでもらえればいいなって、私から声をかけて友達になった。私が友達になったことで、だんだん友達が増えたみたい。
父: それは、むしろ素晴らしい。
娘: そっか……、だよね。
父: 人に心配りができることや感謝される行動をするのは、何も悪いことではないよ。ただ、自分の感情を殺してまでやろうとはしなくていいだろうね。サオリのそういう性格、お父さんは好きだよ。
娘: (無言で照れ笑いを浮かべる)
父: サオリって不思議な子でさ、これまで一度も「あれ欲しい」「これ買って」って駄々をこねたことないんだよ。スーパーのお菓子売り場で、お菓子を買ってもらえずにかんしゃく起こす子どもっているでしょ?あの類はおろか、おねだりさえしない。妙に聞き分けがいいというか、子どもらしくない子だったよ。
娘: 6年生の時、塾の送り迎えの途中に「お菓子が食べたい」って思ったときも、ストレートに言えなかった。代わりに「お父さんがイチバン好きなお菓子は何?」って話題を振って、コンビニ寄らない? アピールをしたんだ。でもお父さん気付いてくれなくて、そのことを後で伝えたら、「素直にお菓子欲しいって言えよ! 子どもらしくないな〜(笑)」ってお父さんに笑われたもん。
父: あー、あったね。「スナック系だと、カールのうす味が1位で2位がハッピーターン。甘い系だとブルボンのルマンドが1位だけど、ホワイトロリータも捨てがたいんだよな……その時の気分で順位が入れ替わるというか……で、サオリは?」ってトンチンカンな会話を続けてたよね。
娘: 私は心の中で、「まじめに答えてんじゃねーよ、鈍感! 気付けよ!」って思ってた(笑)。
父: 気付けねーよ(笑)。じゃあ次ね、サオリって移り気かな?
娘: すごく思うよ。小学校のころから、いろんな習い事をしたし、好きなものがコロコロ変わってたからね。
父: 新体操、器械体操、絵画、マラソン……。毎年変わってたね。
娘: 何かを好きになると、それだけに夢中になるんだけど、飽きるのも早い。
父: 習い事はそうだね。でも、興味関心はわりと一貫してない? 絵と工作がずっと好きだったし、3年生のときは木材を削ってライトセーバー(スターウォーズのジェダイの武器)を作ったよね。蛍光スプレーで色を付けて、グリップまできっちり作り込んでた。4年生の時は、竹とタコ糸で弓矢を自作したじゃない。で、それを「クラスのみんなに見せる」って弓をたすき掛けにして登校してたよ。
娘: 担任の先生が、あぜんとしてた(笑)。あと、柴犬を飼ってもらえなかったから、ダンボールで等身大の柴犬を作って、それをペットにしたり。※柴犬を飼いたがったが、妻の反対で却下される出来事があった。ちなみに、娘が本気でお願いしてきたのは、これが唯一
父: あれにはあきれたね。ご丁寧に親子2匹の柴犬を作って、名前まで付けてたから、いじらしくって……(笑)。
娘: だって、飼わせてもらえなかったから……。
父: 5年生のときは、木の上に秘密基地作るのがマイブームだったでしょ。木に釘を打ち込んで階段にしたり、毛布を持ちこんで、寝ようとしたり、石ころを枝に並べて、「爆弾で敵を攻撃するのだ」ってやってたよ。それも、女の子が1人で。
娘: 何かを作ることが、大好きなんだよ。
父: あれこれ手は出しているから移り気に見えるけど、興味関心はブレていないって思うなあ。小さい時に、いろんなことに挑戦するのって、1つのことしかしたことのない子どもより経験が広がるし、世界が広がるよ。そーゆーことの積み重ねがあったから、美術部に入ったんだろうし、小説を書くんだと思うよ。だから、飽きっぽいってことはマイナスじゃないって。
娘: そう言われると、そんな気もしてくるね。
父: じゃあ、今度はお父さんの結果を見てみようか……。「理屈屋」らしいな。
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