では、具体例を使って考えてみましょう。まずは「分かる」からです。
この言葉は、誰が聞いても理解できる言葉でしょうか? 確かに、漠然とイメージは浮かびます。皆目見当がつかないということはありません。しかし、「何をもって分かったと判断するのか」がはっきりしなければ、分かったかどうかは本当のところ確認できません。
この意味で、「分かる」という言葉は、このままでは誰にでもきちんと分かるものにはなりえないのです。次に、これを命令文にしてみましょう。
「分かれ!」
これが無意味な命令文であることは、はっきりしています。「分かれ!」と言われても、言われたほうは対応しようがありません。「分かってくれよ……」と泣きつかれると困るのも、これが原因です。つまり、「分かる」は体で実行できない言葉なのです。
こうしてあらためて振り返ると、「分かる」という、私たちが当たり前のように使っている言葉が、実は頭で分かることも体で実行することもできない、先ほどの図のエリア3に位置する言葉であることがはっきりします。
だから、「分かりました」ととりあえず答えた部下が実は分かっていない、ということが四六時中起き、それによって上司も部下もお互いがストレスを感じ、ひどい場合には関係までも悪化したりするのです。
繰り返しますが、これは、部下がグータラで不真面目だから起こるとは限りません。彼(彼女)なりに上司の指示や要求に一生懸命に応えようとしてなお、いくらでも起きうるのです。なぜなら、「分かる」という言葉自体がこれほどまでにつかみどころのないものだからです。
ストレスを引き起こす原因は「言葉のすれ違い」にアリ?
部下が指示を理解してくれないのは、あなたの能力不足かも?
43.1%の人が「自分の能力を引き出してくれる上司に出会ったことがない」
なぜ管理部門は“指示待ち”になるのか?
社内コミュニケーションに悩んでいます
新入社員の4割は「良心に反しても、上司の指示通り仕事をする」Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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