プロ野球の契約更改には、3つの問題がある赤坂8丁目発 スポーツ246(3/3 ページ)

» 2014年11月27日 08時00分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]
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経営者側に有利な構図

 そして最後にもう1つ。「?」を抱く人が多いのがプロ野球選手の「年俸の減額制限」だ。日本プロフェッショナル野球協約の第92条には「参稼報酬の減額制限」として年俸1億円超なら40%、それ以下なら25%までと規定されている。とはいえ、今オフも複数の選手が所属球団側から減額制限を越える減俸を提示されるなど毎年のように上限オーバーの契約更改交渉が行われているのが実状である。

 規約では「選手の同意があればこの限りではない」と注釈が付けられていることから、確かに選手の同意さえ得られれば減額制限を超える契約更改をしても違反にはならない。仮に減額を超える球団提示額に納得できなければ選手側には、同協約の94条で記載されている通り、コミッショナーに対して年俸調停を求める申請書を提出するか、あるいは自由契約の道を選ぶことも認められている。

 それでも、このルールには「形骸化しているのではないか」という指摘が絶えない。契約交渉で大幅減額されるような場面になったら、どうしても選手側は強くモノを言いにくいだろう。調停を申し出る方法もあるとはいえ「後々を考えれば球団側と気まずくなるかもしれない」という不安感を抱く選手が大半だけに、これまでを振り返っても実行された例は少ない。

 そういう背景と照らし合わせると、選手側がチーム残留を望むとすれば、上限オーバーの減額提示を受けても簡単に「NO」とは言えず、最終的には仕方なく同意せざるを得ない“システム”になっているのがよく分かる。まだまだ日本のプロ野球界は経営者側に有利な“時代遅れの構図”となっていると言えるのだ。

 日本プロ野球の契約更改の手法に全面的に満足している選手は皆無に等しいだろう。今回は各方面に波紋を呼ぶ可能性もあったのであえて執筆は控えたが、仮に真相を明かせば大問題に発展しかねないような“契約更改のタブー”は具体例を含めていくつか残されている。労使不均衡のいびつな関係を打ち崩したいと願っているプロ野球選手に同情する人は世の中にもきっと多いはずだ。だからこそアンタッチャブルとされる部分にも、いつか折を見てメスを入れたいと思っている。

日本のプロ野球界は経営者側に有利(写真はイメージです)
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