お前が変えてみろよ、おしぼりの価値観ってやつを:郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)
おしぼり漫画をWeb展開、7つの香りの新商品――日本独自のおもてなし文化・おしぼりを、「OSHIBORI JAPAN」と称してブランド化を進める、おしぼり屋の2代目がいる。“たかがおしぼり”から“されどおしぼり”へ、2代目の戦略とは?
温故知新の事業展開
さて2004年10月入社以来、克之さんが価値観を変えたくて手がけたのは、漫画だけではない。
事業 | 商品・事業一覧 |
---|---|
商品開発 | 「おしぼりアロマ芳香剤LARME(7つの香り)」「アロマペーパータオル」「美容タオルレンタル(エステや美容室向け)」 |
通販事業 | 「フジナミ・スクエア(オンラインショップ)」「e-Shizai(カタログ販売)」 |
広報・文化事業 | 「ドビィーくん漫画」「ドビィーくんグッズ」「かほりの時間(フリーペーパー)」「OSHIBORI JAPAN」 |
一時コンサルタントの修行もした克之さん、“アンゾフのマトリクス”(新旧の市場・顧客の軸)をPower Pointで説明するが、筆者はそれを参考に、おしぼり屋っぽく“しぼる−ゆるくマトリクス”を作った。
起点はたかが&されどおしぼり屋であることと、“くやしい”気持ちだ。そこからの展開は“温故知新”、彼の好きな言葉であり、家業の継承・成長のキーワードでもある。おもてなしという本質的な付加価値を追求した“香り”の商品開発、これは“温故軸”(古きをたずねる)の展開だ。Webサイトやフリーペーパーという広報手段を導入して、従来の御用聞き的営業を超える“知新軸”(新しきを知る)の展開もバランスが取れている。古きの本質を突きつめつつ、新しきを加える。
そして、対角軸は“ゆるく−しぼる”。業界のイメージを上げるためスローガンや応援をするのではなく、漫画やアートというゆるめの変化球がいい。
父の事業を否定せず、100%肯定もせず、本業へのこだわりと時代の変化をミックスする。それでなければ家業、つまりファミリービジネスは継続できない。ピーター・ドラッカーは「ファミリーのためのビジネスではなく、ファミリーはビジネスのためにある」と言ったそうだ。それをもじれば「おしぼりのためのビジネスではなく、おしぼりでおもてなしの本質を究める」、それが藤波タオルのファミリービジネスを継承し、発展させていった。
ニッポン発のおしぼり文化発信
成田空港に着くと目にする、国土交通省の「Yokoso! JAPAN」に触発され、「おしぼりを日本の誇るブランドにしよう」と発想したのがOSHIBORI JAPANだ。ブランド戦略としてロゴやグッズを展開してきたが、実は日本が世界に誇る3つの文化戦略を、彼はすでに奔流のように進めてきた。それは「漫画」「香り」、そして「おもてなし」だ。
「まず汚れが落とせないのを手作業で分けるんですよ」。克之さんの案内でおしぼり工場のライン見学をした。戻ってきたレンタルおしぼりの最初の工程は、汚いおしぼりを取り除くこと。おしぼり以外の用途(掃除など)で使われたものだ。
確かに真っ黒なおしぼりでは“頬ホンワリ”も“額ゴシゴシ”もできない。おもてなしという日本人の礼を広めるおしぼり事業、素晴らしいじゃないですか。
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