新入社員にKYは少ない。むしろAKY(あえて空気読まない)が必要だ:それゆけ! カナモリさん(4/4 ページ)
ビジネスパーソンに求められる資質の1つに「新たな視点と気付き」がある。これを“醸成”することは難しく、むしろ日常の中に新たな発見が潜んでいるはず。少々頭が堅くなってきた中堅社員は6つのポイントを実行すれば、新たな発見が生まれるかもしれない。
ディズニーの出前授業「魔法の教室」は、まず“馬”を射る?
恥ずかしながら、無類のディズニー好きである筆者のアンテナにピピッときた、新たな展開。それは出前授業「魔法の教室」。それはとても意義深い活動なのだけれど、同時に東京ディズニーリゾートにも有益な、ウィンーウィンな展開なのだと思う。
東京ディズニーランドが25年前に開園したとき、筆者は高校生だった。
当時、スペースマウンテンにも、エレクトリカルパレードにも大興奮したのだが、実は地味に驚いたのが掃除のお兄さん、お姉さんの動きだった。こぼれたポップコーンを発見すると、軽やかに歩み寄って、巧みに両手のほうきとちり取りをササッと操り、目にもとまらぬ早業で掃除を完了させる。「掃除」という概念を根本から覆された気がした。
というのも、当時筆者は高校生ができる数少ないアルバイトとして、土曜の午後に工場清掃の仕事を時々していたのだ。お小遣いがもっとほしいので、アルバイトをするのだが、どうにも掃除は好きになれなかった。今にして思えば大変けしからぬことだけど、結構、ぐだぐだやっていたように思い返される。もちろん、怒られてしまうような手抜きはしていなかったのだが、はっきり言って心が入っていなかった。
それが、ディズニーランドの掃除の人たちは実に楽しげに仕事をしているのだった。まるで掃除係ではなく、ランドのキャストであるかのような姿に感動した。その後、掃除係はランドの環境美化を担う重要なキャストであると位置付けられており、各々が高いモチベーションを持って働いているのだと知り納得しつつも、さらに感心したものだった。
その清掃作業を担うキャストが、ディズニーリゾートを飛び出し、小学校1・2年生に掃除の仕方を教える出前授業「魔法の教室」を始めたという。(アサヒ・コムより)
講師役のキャストが小学生に、ほうきとちりとりを使って掃き掃除を実演。その後、ペットボトルのふたをごみに見立てて、児童が5〜7人ずつに分かれて床の掃除をした。当然、単に掃除のテクニックを教えるのが目的ではない。 TDRを運営するオリエンタルランドでは、掃除のこつを教えるだけでなく、「きれいなところは気持ちがいい」「掃除は1人ではなくみんなでやることによって、より早くきれいになる」といった心の部分も教えていくという。
何とも意義深い活動である。参加した生徒の感想が非常にいい。「楽しかった。家の掃除でも教えてもらったことをやってみたい」と話していた。
オリエンタルランドとしてはPR活動と位置付けているが、これはもっと効果のある、来場促進活動になっているはずだ。生徒のコメントにあるように、子供は当然、家で話をし、掃除の手伝いをしたいというだろう。そして、また、ディズニーリゾートで、清掃キャストの働く姿を見たいと言うだろう。「掃除のお手伝いを続けられたらね」などという条件が親からつけられるかもしれないが、我が子の良い習慣、環境美化や整理整頓に対する関心の高まりを親としてうれしく思わないはずがない。
そして子供が「何としても掃除のお兄さん・お姉さんに会いに行きたい!」と言い出したら、家族のレジャー予定リストに赤丸急上昇でランクインすることだろう。「将を射んとせばまず馬を射よ」というが、レジャーの予定を決めるのは親だが、まず、子供に働きかける活動はかなり効果的だと思われる。
マーケティングの世界では「DMU=Decision Making Unit(購買決定単位)」といい、商品購入の利害関係者を洗い出し、その力関係を把握し、適切にキーマンに働きかけることの重要性が知られている。子供をキーマンとして働きかけをするこの「魔法の教室」はその意味からも注目に値する活動だといえるだろう。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサ ルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダ イヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディ アへの出演多数。 一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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