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インタビュー

千葉県から世界へ! 串焼きチェーン「くふ楽」が目指すもの――福原裕一氏(前編)嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(1/3 ページ)

年間離職率が30%を超える外食業界で離職率は毎年5%以下という居酒屋がある。千葉を中心に「くふ楽」「豚の大地」などを展開するKUURAKUグループだ。就職希望者全員に内定を出すなど話題になった同社で、若者が「働きたい」「辞めない」のはなぜなのか?

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嶋田淑之の「この人に逢いたい!」とは?:

「こんなことをやりたい!」――夢を実現するために、会社という組織の中で目標に向かって邁進する人がいる。会社の中にいるから、1人ではできないことが可能になることもあるが、しかし組織の中だからこそ難しい面もある。

本連載では、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏が、仕事を通して夢を実現するビジネスパーソンをインタビュー。どのようなコンセプトで、どうやって夢を形にしたのか。また個人の働きが、組織のなかでどう生かされたのかについて、徹底的なインタビューを通して浮き彫りにしていく。


 銀座の裏通り、雰囲気のよい隠れ家風の店。入るなり、「いよっ!」「いらっしゃい!」と7〜8人のスタッフ全員のピシッと揃った声が響く。席に着くと「こちらは店からの気持ちです!」といって、お通しが出てきた。「ほお、お通し代が無料ということか……」と興味を持って、和風ドレッシングのかかったキャベツに箸をつけると、これがなかなかの美味だ。

 なんとなくテンションが上がってメニューを眺めているとカウンター越しに声を掛けられた。「今日は、美味しい串焼きをご用意していますよー!」。カラッと明るい雰囲気なのだが、その言い方にとても心がこもっていたので、この若い男性に任せてみることにした。

 ひとわたり、ビールと串焼きを堪能してテーブルで会計をお願いすると、間髪を入れず、暖かい味噌汁が供された。これも「店からの気持ち」らしい。心にぽっと灯がともるような、何となく温かい余韻とともに店を出た。


炭火串焼厨房 くふ楽 銀座店

千葉から世界へ!――全店黒字経営・年間離職率5%の居酒屋チェーン

 今、産業界で注目を集めている居酒屋チェーンのオーナー経営者がいる。株式会社KUURAKU GROUP代表取締役・福原裕一氏(43歳)。「くふ楽」「福みみ」「生つくね 元屋」「焼酎泡盛 豚の大地」などの居酒屋チェーン(全18店舗)を中心に、NPO法人や学習塾の経営まで手がけている。年間離職率が30%を超える飲食業界にあって、連年5%程度という驚異的な数字を誇るだけでなく、チェーン全店黒字経営を実現。千葉県発祥の中堅企業ながら、既にカナダ進出を実現し、その目は世界に向いている。

 KUURAKUグループではスタッフのほとんどが若いアルバイトだ。彼らの「ダイナミズム」こそが、同社の躍進の駆動力といわれる。若者の心がつかめず、学級崩壊ならぬ“職場崩壊”が進んでいる日本の産業界で、福原氏に寄せられる期待は大きい。


KUURAKU GROUP代表取締役の福原裕一氏。「くふ楽」「福みみ」「生つくね 元屋」「焼酎泡盛 豚の大地」などの居酒屋チェーンを経営する

 こんな紹介をすると、ちょっと宗教がかったカリスマや、脂ギッシュで猛烈なワンマン経営者を想像しがちだが、実際に福原氏にお会いした印象は、穏やかな微笑みを湛えた自然体の人物である。若いスタッフの方々にも気負いはなく、皆いかにも今時の若者といった感じで爽やかだ。

 私見だが、福原氏はたいへん卓越した経営者でありながら、その本質は日本や世界の変革を目指す、社会起業家に近いのではないか(社会起業家としての福原氏は後述する)。

 これまでの同社に対するマスコミの取材記事は、同氏が若いスタッフの活性化に長けているということから、システムやプロセス面でのユニークなノウハウにフォーカスしたものが多かった。そこで本連載では、同氏の構想する「戦略経営」(Strategic Management)の全体像を俯瞰的に捉えてみたいと思う。今回は、まず「経営理念」を中心に検討したい。

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