iPhone 3Gの“第2段ロケット”:神尾寿の時事日想
7月11日に発売されたiPhone。日本市場でもセンセーショナルなデビューを飾り、順調に売れているが、今、筆者が注目しているのは「法人市場への展開」である。
7月11日、ソフトバンクモバイルからAppleのiPhone 3Gが発売された。まさに“お祭り騒ぎ”といえるその模様と、筆者によるiPhone 3Gのレビューは別記事に詳しいが、同機が日本市場においてもセンセーショナルなデビューを飾ったのは確かだ。
→レビュー:「iPhone 3G」がもたらす“ケータイの未来”
iPhone 3Gは販売面でも順調な滑り出しを見せている。まずグローバルでは、世界21カ国で発売開始されてからわずか3日間で、ヒットモデルの最初のハードルである100万台のセールスを達成(参照記事)。AppleのアクティベートシステムのトラブルやMobileMeの不具合といった問題が生じたものの、売れ行きは好調だ。
一方、日本では、ソフトバンクモバイルは正確な入荷台数や販売数を発表していないが、発売開始後の週末で都市部のソフトバンクショップや家電量販店では売り切れが続出。発売日である7月11日の販売シェアは4割を超えた(参照記事)。日本市場では、日本メーカー製端末の性能・機能面の優秀さや、日本語特有の入力環境の“慣れ”の問題といった逆風があるものの、ひとまず良好なローンチを果たしたといってもいいだろう。
次なる注目は法人市場でのiPhone 3G
このようなiPhone 3Gフィーバーの中で、筆者が次のステップとして注目しているのが、法人市場の動きである。iPhone 3Gは「ユーザー体験へのこだわり」や「メディアプレーヤー機能の優秀さ」からコンシューマー市場のプロダクトとして注目されているが、法人市場においても大きな可能性を秘めている。
特に注目なのが、法人市場向けのデータ通信サービスの普及・利用促進効果だ。多くのキャリアの法人ビジネス担当幹部が話すとおり、日本の法人市場のニーズは「音声通話が中心」であり、データ通信を使った高度なサービスやソリューションの利用は発展途上にあるのが現状だ。
→法人ビジネスについて:NTTドコモ/KDDI(au)/ソフトバンクモバイル/ウィルコム
しかし、iPhone 3Gはタッチパネルによる直感的かつスムーズな操作性を持ち、Webアプリや公開されたSDKによってシステム開発の自由度が高い。すでにモディファイなどが日本の法人市場向けiPhoneプラットフォーム事業への参入を表明しており(参照記事)、ソフトバンクモバイル自身もiPhone 3Gの法人市場向けの展開に積極的に乗り出す可能性が高い。iPhone 3Gの優れた操作性と自由度の高さをいかし、日本企業にとって使いやすいサービスやソフトウェアが多く登場すれば、iPhone 3Gは日本の法人向けソリューション市場における“らくらくホン”のような存在になれるポテンシャルを持っている。
米国に目を向けると、すでにウォルトディズニーや米国陸軍がiPhoneを導入、活用中だ。それ以外にも「フォーチュン誌トップ500の企業のうち、35%の企業がiPhone 3GのSDKベータプログラムに参加している」(Apple)という。欧米の法人向けモバイルソリューションというとBlack BerryやWindows Mobileの利用が一般的だが、そこにiPhone 3Gのプラットフォームは浸潤しはじめている。
iPhone 3Gにとって、法人市場は普及と拡大の「第2段ロケット」である。日本市場でも、ここにうまく火が付くか。それはiPhone 3G向けの法人ソリューションやサービスがどれだけ登場するかにかかっている。今後の動向に注目しておいて損はないだろう。
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