時速10キロメートルの銀座旅行――自転車タクシー「ベロタクシー」で行く:近距離交通特集(2/3 ページ)
自転車にお客を乗せて走るベロタクシーは、日本では2002年にデビューした新しい交通手段だ。現在国内で約100台が営業しているベロタクシーの実力とは?
銀座でベロタクシーに乗ってみた
細尾さんに話を伺った後、実際にベロタクシーに乗せてもらうことにした。東京の銀座で運行しているということで、JR有楽町駅に向かう。東口を出ると、有楽町イトシア前に2台のベロタクシーが止まっていた。
「自転車のタクシーはいかがですか」
右手にハンドブックを持ちながら、お客を呼び込むドライバーたち。聞くと、いつもこの場所を拠点に営業活動を行っているらしい。乗車運賃は初乗り(500メートルまで)大人300円(小人200円)、超過料金が100メートルごとに大人50円(小人30円)。
乗せてもらったのは、運転歴5年という川田慎行さんのベロタクシー。目的地は特になし、銀座を案内してもらうことにした。
人力で動くため、時速10キロメートルほどしかスピードは出ない。観光用途以外で使うお客さんは少ないかと思ったが、「銀座三越や歌舞伎座に行かれるお客さまが多いですね。歩くには遠いけど、タクシーに乗る距離でもないという場合に利用されるようです」(川田さん)
ベロタクシーはクルマのような窓はないため、街の音や吹き抜ける風を直接感じることができる。その代わり寒さが“大敵”で、座席には毛布が置いてある。運行期間も4月から11月ころまでだ。また、雨の日には運行休止となることもある。
ベロタクシーが進み出すと、道路の凸凹が直接座席に伝わってくる。人力ということで体重が重い人は運びにくいだろうと思いきや、「相撲取りの方を2人乗せたこともあります」(川田さん)。戦後、日本では輪タク(りんたく)という自転車タクシーがあった。輪タクは馬車の馬の代わりを普通の自転車が務めるというだけの構造だったが、ベロタクシーは車体に電動アシスト機能を持たせたことでドライバーの負担を軽減しているのだ。
道路を曲がる時には、クルマがランプを点滅させるように、進行方向に手を突き出して、周りに注意を喚起する。ドライバーによっては、どう手を突き出すかがカッコイイかにこだわって研究している人もいるそうだ。
ドライバーになるには普通免許か自動二輪免許を持っていなければならず、加えてベロタクシー独特の動かし方や、手信号を覚えなければならない。変則ギアは何と21段階あるという。
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