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「世界は美しいものなんだな」と感じてくれる映画を作りたい――宮崎駿監督、映画哲学を語る(後編)“ポニョ”を作りながら考えていたこと(1/4 ページ)

『風の谷のナウシカ』『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』など数々の映画で、国内外から高い評価を受けている宮崎駿監督の会見。後編では、自分の作品や好きな映画についての質疑応答を紹介する。

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 『風の谷のナウシカ』『もののけ姫』などのアニメーション映画を手掛けた宮崎駿監督が11月20日、東京・有楽町の日本外国特派員協会に登場、最新作の『崖の上のポニョ』や現代社会に対する不安、自らの映画哲学などについて語った。

 前編は現在憂いていることや海外のクリエイターとの比較などの話だったが、後編では宮崎監督の作品や好きな映画などについての質疑応答を紹介する。

 →悪人を倒せば世界が平和になるという映画は作らない――宮崎駿監督、映画哲学を語る(前編)

作品が分かりにくくなった理由


宮崎駿監督

――『崖の上のポニョ』でデボン紀を題材とされた理由はなぜですか?

宮崎 その前のカンブリア紀に魚はいませんから、魚がいっぱいいるのはデボン紀かなと。甲冑魚というのは私が子どものころ、とてもドキドキした記憶があるんです。だからデボン紀にしたのです。

――初期の作品に比べて、最近は『崖の上のポニョ』のようにいろいろと解釈できるような作品が多いのはなぜですか?

宮崎 自分の変化もあると思いますが、もう1つは世界がますます複雑になったため、現実の世界を追いかけていくうちに映画が複雑になってしまったのです。

 (分かりやすい作品は)DVDにもなっていませんし、一切外に出ていない(三鷹の森ジブリ)美術館用の短編があります。そこで今まで6本ほど作った短編を見ていただければ、極めてシンプルな幸せな世界があると思います。

――主人公が若い女の子ばかりなのはなぜですか? 今後もこの傾向を続けていくおつもりですか?

宮崎 今、スタジオの若いスタッフに、「君たちは8歳の男の子を主人公にした映画を作らなければならない」と私は言っています。それはとても難しい作業なのです。

 なぜなら8歳の少年は悲劇的にならざるを得ないものを強く持っているからです。知らなければいけないことが山ほどありすぎ、身に付けなければいけない力はあまりにも足りなくて……つまり女の子たちとは違うのです。少女というのは現実の世にいますから、極めて自信たっぷりに生きていますけど、男の子たちはちょっと違うのだと思います。

 それは私の不幸な少年時代の反映なのかもしれませんが、若いスタッフには「君たちの幸せな少年時代を反映させて、少年を主人公に映画を作れ」と言ってあります。

 その年齢の少年たちは実に簡単に世の中のワナに引っかかるのです。つまらないカードを集めたり、つまらないラジコンの車に夢中になったり、あっというまに商業主義のえじきになってしまって、なかなか心の中を知ることができないのです。

――息子さん(宮崎吾朗氏)もスタジオ・ジブリでアニメの監督(『ゲド戦記』)をされていますが、将来的には息子さんを後継者としてお考えですか?

宮崎 非常に微妙な問題です。自分の息子だからといってえこひいきはしません。彼はこの次に本当に試されるのだと思います。

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