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ホンダはなぜF1から撤退するのか?――社長会見を(ほぼ)完全収録(3/5 ページ)

本田技研工業は12月5日、突然F1レース活動からの撤退を表明した。その決断の背景にあったものとは何なのか。福井威夫社長とモータースポーツ担当の大島裕志常務が登場した記者会見の詳細をお伝えする。

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「休止」ではなく「撤退」


ホンダ創業者の本田宗一郎氏(出典:浜松商工会議所)

――F1事業は創業者の本田宗一郎さんの思いで始められた事業だと思います。ホンダの歴史にとって、今回の撤退はどういう意味があるとお思いですか?

福井 今回の撤退は歴史上どういう意味を持つかというよりは、例えば5年後にどうなるかで評価が下されると思っています。やめるということではなく、やめた力でどういう新しい価値を生み出すかということで評価されるべきだと(思います)。非常に大きな決断だったわけですが、「これはいい決断だったね」と言われるようにしないといけないと思っています。

――撤退の決断は昨日ということですが、選択肢としてはいつごろから考えていたのですか。また、過去2回の撤退のように再びF1の舞台に戻ってくる気持ちはあるのでしょうか?

福井 会社としての決定は昨日ですが、私個人としてはもうちょっと前から決めていました。

 F1という活動は相当大きなインパクトを企業に与えますので、はっきり申し上げると毎年毎年そういう(「今年で最後かもしれない」という)緊張感を持ってやっていました。毎年そういう検討をするわけですが、特に今回は非常に厳しい状況だったために、こういう決断になったわけです。将来のことは今申し上げる段階にはないですが、再復帰を考えての決断ではなくて、今回は完全に撤退であります。将来のことはまだ白紙です。

――先ほどの質問の確認になるのですが、第1期が終わった時には有名な「休止」という文言が使われ、第2期が終わる時も「休止」という文言が使われたと思います。今回は「撤退」となっています。これはホンダのモータースポーツに対する姿勢が変わったと理解してよろしいのでしょうか?

福井 ホンダのモータースポーツに対する考え方に大きな変化はないと思います。撤退という言葉をあえて使ったのは、100年間自動車産業が繁栄してきて、それが新しい100年に入ったという認識を我々は持っているんですね。従ってF1に注いできた「情熱」「リソース」「人材」、それを新しい時代に振り向けるべきだというものすごく強い意志がここ(「撤退」という言葉)に入っているとご理解していただければと思います。

――今シーズン、ホンダは「2009年に資源を集中する、今年は半ば捨てるけれども来年に期待してほしい」と言い続けてきました。今日の発表の直近まで、来季への期待を持たせるような情報を出し続けたのは、ファンにとっては一種の裏切り行為のように感じるのですが。

福井 ファンの皆様には本当に申し訳ないと思っています。状況を説明しますと、自動車の販売だけではなく、二輪車、汎用製品も含めて、北米のみならず世界中のマーケットが10月(に悪化し)、11月に入ってからは加速度的に減速しています。我々の想像をはるかに越えたような、全く先が見えないような状況に加速度的になっているのが11月です。

 従って10月以前、少なくとも9月までの状況ではこういう決断はたぶんなかったと思います。F1のチームの全員、来年に向けて相当いい状態に仕上がっています。彼らとしては来年に向けて手掛かりは十分つかめていたし、彼らは一生懸命やっていました。それに対して、われわれがビジネス上の理由で撤退を決断したわけで、そういう面ではファンの皆さまだけではなく、F1レース界の皆さまに申し訳ないし、ロス・ブラウンを含めたエンジニアにも申し訳ないと思っています。

――11月の販売状況が厳しくなって撤退ということですが、11月にバルセロナでテスト走行されていましたよね。その時は撤退は決まっていなかったのですか。ロス・ブラウンに相談はしなかったのですか。

福井 (撤退を決めたのは)直前ですね。バルセロナの(走行)テストの感触が、かなりポジティブだという報告をわれわれも受けていて、来年に向けての手ごたえがあったわけです。あの時点ではこういう話はなくて、ロス・ブラウンにこういう話を投げかけたのもわりと直近です。


2008年11月国内新車販売台数(出典:日本自動車販売協会連合会)。ホンダの販売台数は前年同月比マイナス21.2%

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