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「省エネ対策」をビジネスに――ドイツのエネルギーエージェンシー:欧州エコビジネス最前線(3/3 ページ)
ドイツで1990年代から登場しているエネルギーエージェンシー。エネルギーエージェンシーでは自治体や公共施設を主な顧客として、省エネ促進や再生可能エネルギーの利用促進などを手がけているのだ。
エネルギー契約というビジネスモデル
さて、建物によっては省エネ改修を必要とするものもあるが、自治体にとって資金調達は容易ではない。そこで考え出されたのが「エネルギー契約」というエコビジネスである。仕組みはこうだ。
自治体は専門業者と契約を結び公共施設の改修(特に空調設備)を任せる。改修費用は業者が負担し、自治体が「光熱・水道費の削減費用」から支払ってゆく。改修費に見合った省エネが達成できなければ事業は赤字となるが、改修に先立つ調査も業者が行うためそのリスクも業者が負う。
自治体にとってのメリットは以下のとおり。
- 自己負担やリスクなしに公共施設の省エネ改修が可能
- 改修費用を返済し終わるまで経費削減はないが、数年後からは光熱・水道費の削減が可能
- 大気保護や二酸化炭素排出削減を実現
例えば市内で最も大きい学校「インターナショナルスクール」の場合。
1970年代に建設された学校を契約業者が45万ユーロかけて省エネ改修し、これによって光熱・水道費の20%削減に成功した。市にとっては年間9万ユーロの経費削減となり、およそ5年で改修費用をペイできることになる。
ここでクリバが果たす役割は、自治体向けのエネルギー報告書の作成を通してエネルギー契約の可能性がある公共施設を洗い出すこと。必要に応じて業者の選定、コーディネート、契約にもかかわる。
エコロジーの取り組みは「環境にいいことをしよう!」という環境意識への訴えが基本になくてはならないが、継続的な発展にはビジネスとして成り立つことが不可欠だ。エネルギーエージェンシーのビジネスモデルはその好例といえよう。
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